研究課題/領域番号 |
21K05767
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中野 俊樹 東北大学, 農学研究科, 准教授 (10217797)
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研究分担者 |
白川 仁 東北大学, 農学研究科, 教授 (40206280)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / 環境ストレス / ストレスタンパク質 / グルタチオン / 脂質過酸化 / 絶食 / ギンザケ |
研究実績の概要 |
魚類はローカルとグローバルな要因が複合した環境ストレスを受ける。そして生殖、回遊などの影響により、絶食状態に陥ることがある。しかし、絶食と酸化ストレスの関係は明らかではない。今年度は、絶食がギンザケ(Oncorhychus kisutch)の健康状態に及ぼす影響について検討した。 ギンザケを馴致後、毎日給餌する対照区と飼料を与えない絶食区に分け、2週間及び6週間飼育した。その後MS-222により麻酔し、組織と血液を採取した。 それら採取した組織のストレスタンパク質(HSP70)の発現レベル、脂質過酸化レベル、グルタチオン(GSH)レベルなど生体のレドックス状態について調べた。 1. HSP70の発現について: 絶食2週間で肝臓、普通筋などにおけるHSP70の発現量は有意に増加した。一方、6週間での発現量は2週間の時と比較して減少した。2. 脂質酸化レベルについて: 2週間では肝臓、普通筋などにおいて酸化脂質レベルは対照区と比較して有意な差が認められなかった。一方、6週間では、肝臓において有意に上昇した。3. GSHレベルについて: 肝臓、普通筋などのいずれにおいても、GSHレベルに有意差は認められなかった。以上のように、2週間及び6週間の絶食は組織においてストレスを生じ、HSP70の発現を誘導することが示唆された。さらに肝臓において脂質酸化レベルが増加したので、酸化ストレスが誘発されていると思われる。一方、絶食による斃死個体はなく、肝機能や組織に重篤な障害が認められなかったことから、6週間程度の絶食がギンザケの健康に及ぼす影響は小さいと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
魚類の絶食ストレスにおけるマーカーとなる候補分子について、飼育条件を変えて検討することが出来た。その結果、ストレスタンパク質や酸化脂質など生体のレドックス状態に関わる物質のレベルが指標として有効なことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果を基に、絶食以外のストレスによるストレスマーカーの動態と有効性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に要する試薬・キット類が研究室の在庫品で充足され、新たに購入の必要が無かった。また学会発表旅費も他の財源で賄えた。以上などの理由により、次年度の繰り越しが生じた。次年度は、新たな測定項目も増えるので、それに充てたいと考えている。
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