研究課題/領域番号 |
21K05770
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
木谷 洋一郎 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 助教 (70565340)
|
研究分担者 |
亀井 宏泰 金沢大学, 生命理工学系, 助教 (00610362)
長島 裕二 新潟食料農業大学, 食料産業学科, 教授 (40180484)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | L-アミノ酸オキシダーゼ / 魚類 / 過酸化水素 / ROSシグナル / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
当該年度において超高感度L-アミノ酸オキシダーゼ(LAO)活性測定法の確立を試みた.LAOはL-アミノ酸の酸化的脱アミノ反応を触媒する過程で過酸化水素を生じ,これを介して多様な生物活性を示す.特に一部の魚類においてLAOは強力な抗菌物質として機能していると推測されている.一方LAO遺伝子を持つにもかかわらずLAO由来の過酸化水素が従来法(ペルオキシダーゼ‐オルトフェニレンジアミン呈色法)では検出されない魚種も多い.研究代表者はこの現象についてLAOの局所的な機能,すなわち細胞内や細胞間のシグナル伝達に関与するのではないかと予想し,本研究ではその端緒としてテレフタル酸‐フェントン反応(TP反応)を利用したLAOの超高感度活性測定法の確立を目指した. 超高感度LAO活性測定法の開発に先立ち,TP反応による過酸化水素標準品のHPLC測定条件を検討し,最適条件においては9~9000 nMの過酸化水素を検出することができた.これは従来法の1/100倍程低い範囲で定量可能であることが分かった. 次に血液中に強力なLAO活性を示すキジハタ(Epinephelus akaara)血清を適宜希釈したものを試料とし,キジハタLAOの基質であるL-フェニルアラニンを加え37℃で1時間保温後に当該研究で開発した手法を用いて産生された過酸化水素量を測定した.その結果,3000倍希釈のキジハタ血清において過酸化水素が検出され,また基質を加えない陰性対照でこれは検出されなかった.この結果は微量なLAO由来過酸化水素を本研究で開発した手法で検出可能であることを示した.またこれは従来法より100倍以上高い感度であった. また本研究によりLAOノックアウトゼブラフィッシュが創出され,現在これを繁殖中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに計画した超高感度LAO活性測定法の開発およびLAOノックアウトゼブラフィッシュの創出に成功した.以上より本研究課題は順調に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
初年度において作製されたLAOノックアウトゼブラフィッシュについて感染実験を行い,致死率および遺伝子発現の変動を明らかとする.現在までに数種の魚病細菌標準菌株を入手しており,これらのうちLAO遺伝子の発現量に変化を与える菌種を選定する.LAO遺伝子発現量を調べる組織は皮膚,鰓,消化管,肝臓を想定している.発現量の変動が大きかった組織を対象に網羅的遺伝子発現解析を行うことでLAOと関連して変動する遺伝子の探索を行う.またタンパク質レベルにおける変化を調べるため,過酸化水素の標的分子であるチオレドキシンの量・質的変化について評価する.本研究ではapoptosis-signal regulation kinase 1およびチオレドキシンの複合体(ASK-チオレドキシン複合体)を対象とする.ASK-チオレドキシン複合体は過酸化水素により酸化されることでこれらが解離し,ASK1の活性化プロセスが開始される.そこで抗ゼブラフィッシュチオレドキシン抗体および抗ゼブラフィッシュASK1抗体を作製しASK-チオレドキシン複合体の動態を調べ,ROSシグナリングにLAOが関与し得るか評価する.
|