魚類筋肉における普通筋と血合筋の分化は、魚種によって遺伝的に制御されている。水産利用の観点から、血合筋が大きく、褐変が速いことは負の要素であり、賞味期限の短縮を招く。食品として利用しやすいよう筋分化を制御することは有用と考えられるが、その遺伝的メカニズムは解明されていない。本研究は、ゼブラフィッシュを養殖魚のモデルとして用い、順遺伝学的手法を用いて筋肉の分化に異常を示す系統を作出することを目的とした。これまでに常法に従い、F2世代の集団(855系統)を得た。今年度は、初めにF3世代(1ヶ月以上飼育)の血合筋のサイズを生きたまま計測するため、超音波計測装置を使用した。その結果、体長約2cmのサイズでも血合筋の形状を観察できることが確認された。しかし、1尾あたりの計測に時間を要するため、使用を断念した。次に、凍結切片に対してニトロブルーテトラゾリウム(NBT)染色を行ったところ、明確に血合筋を染め分けられることを確認した。現在までに少なくとも6系統がNBT弱染色性の性質を持つことを明らかにした。NBTは組織中のミトコンドリアおよび筋小胞体を特異的に染色するため、それらの細胞小器官の密度が低い可能性がある。今後、可能な限り早くF3世代の選抜を終えるとともに、得られた変異体に対して、筋分化のマーカー染色による性状解析、ミトコンドリア生成に関与する遺伝子発現解析を進める。最終的に、魚肉の食品としての有用形質を発現するメカニズムを解明することを目指す。
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