研究課題/領域番号 |
21K05779
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
横井 勇人 東北大学, 農学研究科, 助教 (40569729)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヒラメ / 色素胞分化 / レチノイン酸 / 左右非対称性 |
研究実績の概要 |
ヒラメは有眼側のみで色素胞が分化して左右非対称な体色を呈するが、その分子メカニズムは不明な点が多い。レチノイン酸(RA)浸漬およびRA阻害剤の浸漬実験により、変態期の色素胞分化おけるRAの重要性が明らかにされた。本研究は、ヒラメの左右非対称な色素胞分化におけるRAシグナルの役割と、左右差が生じるメカニズムの解明を目指して研究を行なっている。 色素胞分化の評価にはgch2がマーカー遺伝子として使われてきたが、ヒラメでは5つのgch関連遺伝子が見つかったため、色素胞分化における機能の違いを検討した。ヒラメには脊椎動物に共通のgchパラログ1つ(gch1)と魚類に共通のパラログ1つ(gch2)に加え、3つのパラログがあることが示唆された。これらは異体類(flatfish)に特徴的なオーソログであることが示唆されたため、gchfl1、gchfl2および gchfl3と命名した。RAにより制御される左右非対称な色素胞分化との関係について、RT-PCRにより検討した結果、有眼側および黒化した無眼側で強い発現が観察されたが、遺伝子によって発現に違いが見られた。また、組織別cDNA のRT-PCRについても、gch1、gch2 およびgchfl1-3で発現する組織に違いが見られたが、gchfl1-3の中では類似した発現が観察された。ヒラメのgch1、gch2およびgchfl1-3では機能が異なる可能性があり、gchfl1-3の中では機能的に共通性があることが示唆された。 エレクトロポレーションによるヒラメ生体への局所的な遺伝子導入実験では、いくつかの導入電極を検討した結果、導入効率が良好であり、組織へのダメージが少ないプレート型を使用することとし、導入電圧はある閾値を越えると効率が低下することが分かった。ポアリングパルスとトランスファーパルスを最適化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
メダカのGFPノックイン系統の作出が予定よりも遅れている。エレクトレポレーションによるヒラメ生体への局所的遺伝子導入による機能解析については、電極の比較検討が完了し至適条件の検討は良好である。
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今後の研究の推進方策 |
変態期のヒラメで左右非対称の発現する遺伝子群のいくつかについて、共通したメカニズムで制御されていることを示唆する結果が得られた。この共通のメカニズムとRAの関係について、浸漬実験で検討を行う。また、無眼側で色素胞分化を抑制することが示唆される候補遺伝子とRAの関係性について、エレクトロポレーションによる局所的な遺伝子導入により影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、当初参加を予定していた学会での発表を見送ったため。また計画していた実験の一部は翌年度に実施することとしたため、予算についても当初の予定から変更し、2023年度に延期して実施する実験のために使用することとした。
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