研究実績の概要 |
本研究ではヒスタミンの生成において脂質酸化物が関与するかどうかについて検討を行った。脂質酸化物としては様々なアルデヒド類に着目した。アルデヒド類とヒスタミンの前駆物質であるヒスチジンの反応性について検討を行った結果、反応性が高いアルデヒドは分鎖構造、二重結合を持つ炭素数6または7のアルデヒド類であった。特に2,4-アルカジエナールが高い反応性を示したが、これは炭素二重結合が2つ存在し、その他のアルデヒドは、炭素二重結合が1つ存在する。この結果より、ヒスタミンの生成には炭素の二重結合が関係している可能性が考えられ、二重結合が増加するほど、ヒスチジンとの反応性が向上し、ヒスタミンの生成量が増加する可能性が考えられる。さらに、ヒスチジンと2,4-ヘキサジエナール、2,4-ヘプタジエナールで、2,4-ノナジエナール、2,4-デカジエナールをそれぞれ180℃で1時間反応させた結果、2,4-ヘキサジエナールでは157.87nmol、2,4-ヘプタジエナールでは144.11nmol、2,4-ノナジエナールでは189.43nmol、2,4-デカジエナールでは116.87nmolのヒスタミンが生成されたが、アルデヒドの炭素数と相関性は見られなかった。また、反応温度と反応時間による生成能についても検討を行った。37℃で13日間、100℃で24時間、180℃で1時間検討した結果、180℃で1時間の反応のみでヒスタミンの生成が確認された。従って、ヒスタミンの生成は高温での反応条件が必要とされる。しかし、生体や品質が劣化した食品中で生成されることを考慮すると、アルデヒドとヒスチジンの存在だけではなく、他の触媒効果を持つ成分の関与が必要であることが示唆された。また、ヒスタミン生成を確認するにあたり、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用した新たな分析方法の開発を行い、これまでの手法と比較した場合、感度の上昇ならびに分析時間の短縮が可能となった。
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