研究実績の概要 |
昨年度までの研究でヒスタミンの生成は、ヒスタミンの前駆物質であるヒスチジンと脂質酸化物由来のアルデヒド類が関わることを明らかにし、反応性が高いアルデヒドとしれ分鎖構造、二重結合を持つ炭素数6または7のアルデヒド類であることを明らかにした。特に2,4-アルカジエナール類が高い反応性を示した。しかし、これらの反応は、180℃で1時間の反応が必要で食品の保蔵や加工下での条件とは乖離しているため、これらの反応には脂質酸化物由来のアルデヒド類とヒスチジンの存在だけではなく、他の触媒効果を持つ成分の関与が必要であることを考察した。そこで、本年度はこの反応を触媒する食品中の成分について検討を行った。これらの反応を触媒する物質として、水産物に多く含まれるミネラル(金属イオン)、品質劣化に伴い生成される核酸関連物質ならびに有機酸に着目した。実験方法として、前駆物質であるヒスチジン、脂質酸化物由来の2,4-アルカジエナール類(2,4-ヘキサジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-ノナジエナール、2,4-デカジエナール)、そして触媒効果が期待される前述の物質を180℃で1時間反応させた。これを昨年度開発した高速液体クロマトグラフィーを利用した新たな分析方法で分析を行った。その結果、これらの単一成分についてはヒスタミンの生成反応を促進させる有意な成分は見当たらなかった。次年度以降は、これらの化学反応は単一成分による触媒効果は期待されず、複合的な反応が予測される。従って、触媒成分の混合物質による反応も検討し、最終的には鮮度が低下した水産物のエキス成分なども考慮した触媒効果の検討が必要であることが明らかとなった。
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