研究課題/領域番号 |
21K05787
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
泉 庄太郎 東海大学, 海洋学部, 教授 (90450379)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 冷水病原因菌 / プラスミド / ファージ / CRISPR |
研究実績の概要 |
冷水病原因菌のCRISPRアレイに関する小課題については,遺伝子データベース上に登録されている複数の冷水病原因菌全ゲノム配列データをもとに推定した同菌のCRISPRと推定される領域の両端外側に3組のプライマー作製し,約140株の冷水病原因菌分離株からPCR増幅を試みた。このうち少なくとも1組のプライマーでPCR産物が確認され,塩基配列データが得られた菌株は22株であった。これら22株から得られた塩基配列中にはCRISPRアレイが確認され,リピート配列とスペーサー配列の違いによって識別される2つのパターン(パターン1およびパターン2)に大別することができると考えられた。パターン1は22株中21株で確認され,これらの株の由来魚種や分離地域に偏りは見られなかった。パターン1のスペーサー配列には4つのタイプが見られ,それぞれのタイプと由来魚種,分離地域には一定の相関が見られた。遺伝子データベースに登録されている冷水病原因菌ファージの塩基配列と決定したスペーサーの塩基配列を比較した結果,スペーサー配列の一部がファージの塩基配列と一致していた。 冷水病原因菌のプラスミドに関する小課題については,アマゴ由来株より約5.2 kbpのプラスミドを単離・精製し,同プラスミドの既知領域の塩基配列情報をもとに設計したプライマーを用いて塩基配列未知領域のPCRを行った。その結果,同プラスミドの約90%の塩基配列を明らかにした。 冷水病原因菌のファージに関する小課題については,静岡県内の河川水中から二重寒天培地を用いて冷水病原因菌に感染するファージ1株を分離した。同ファージDNAを抽出してアガロースゲル電気泳動を実施した結果,そのゲノムサイズは約12 kbpであることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した2つの小課題とも,ほぼ計画通りの進捗が見られており,おおむね順調に進展していると判断した。 ただし,冷水病原因菌のファージに関する課題では,折りからの新型コロナウイルス感染症の蔓延によって県外への移動を自粛したことにより,県内の複数河川に限ってサンプリングを行った。
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今後の研究の推進方策 |
CRISPRアレイに関する小課題については,冷水病原因菌のCRISPRアレイに特異的な新たなPCRプライマーを設計し,対象菌株をさらに増やすことによって,より多くの冷水病原因菌株のCRISPRアレイの塩基配列データを蓄積すると同時に,その遺伝的特徴についても検討する。 プラスミドに関する課題については,予定している冷水病原因菌の4タイプのプラスミドの塩基配列解析のうち,およそ半分の解析が終わったことになるが,これまでのPCR増幅による塩基配列解析では決定困難な領域があると想定されたことから世代シーケンサーを用いた解析も視野に入れ,解析スピードを上げていくことを検討する。 冷水病原因菌に感染するファージにに関する課題ついては,新型コロナウイルス感染症の蔓延状況等も勘案しながら,河川や養殖場でアユ冷水病が発生する時期を中心に県外を含めたより多くの水域からもファージの分離を試みると同時に,ファージDNAの塩基配列の解析にも着手し,冷水病原因菌ファージの遺伝的特徴などの検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延によって,当初予定していた県外河川でのファージのサンプリングを自粛し,サンプリング河川を県内の複数河川のみとした。その分の旅費,消耗品費,解析費用等が差引額として発生した。 今年度以降は新型コロナウイルス感染症の状況等を注意深く見極め,政府・自治体の要請等にも配慮しながら,できる限り多くの県外河川でのサンプリングを行う計画である。
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