研究課題/領域番号 |
21K05788
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
倉田 修 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (90277666)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リンパ組織 / 脾臓 / 抗原提示細胞 / T細胞 / 魚類 / ヒラメ / ワクチン / 誘導性リンパ組織 |
研究実績の概要 |
尾部血管より異物(カーボン粒子およびホルマリン不活化Streptococcus iniae)を注入された試験魚の脾臓における抗原提示細胞およびT細胞の動態を解析し、魚類脾臓の免疫微小環境を明らかにする。2021年度の研究では、異物注入により、リンパ球を主体とする細胞クラスター(Lym C)および単核細胞を主体とする細胞クラスター(Mono C)が脾臓内に出現することを明らかにした。Lym Cには抗原提示細胞(MHCクラスⅡ陽性細胞)およびT細胞(ZAP-70陽性細胞)が存在したことから、抗原提示を担う免疫微小環境であることが示唆された。 1.異物投与後の抗原提示細胞の動態:各異物を捕食したMHCクラスⅡ陽性細胞は注入3時間後に莢動脈周囲や脾索に検出された。注入1日後にはLym CおよびMono Cが脾臓内に出現し、MHCクラスⅡ陽性細胞はLym C内に多数検出された。Mono Cを構成する細胞の多くはMHCクラスⅡ陰性であったが、時間経過と共に陽性を示すようになった。 2.異物投与後に生じるリンパ球増殖部位の確認:異物注入1日後の脾臓内血管周囲にLym Cが出現した。Lym Cは注入5日後まで拡大傾向にあり、7日後以降はLym CとMono Cの境界は不明瞭となった。注入7日後の脾臓組織内にはリンパ球が多数存在していた。 3.T細胞分布と増殖リンパ球の同定:ヒラメ脾臓内にはT細胞マーカーであるZAP-70を発現している細胞が検出された。ZAP-70陽性細胞は脾臓内に散在的に存在し、一部のLym C構成細胞も陽性であった。異物注入7日後には脾臓内にZAP-70陽性細胞が多数検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に予定していた抗原提示細胞の動態およびリンパ球増殖部位(Lym C)について明らかにすることができた。増殖リンパ球の特定を先行させ、2年目に予定していた抗ZAP-70抗体を用いた免疫組織化学染色を行った結果、増殖リンパ球の多くがT細胞であることを確認できた。一方、T細胞の特定を先行させたことで、1年目に予定していた複数種の異物間の比較検討は次年度に持ち越すことになった。
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今後の研究の推進方策 |
1. 異物の違いによる脾臓内T細胞の増殖誘導効果について比較検討する。1年目に使用した異物(S. iniae)は市販ワクチンとして利用されており、獲得免疫を誘導する異物である。本課題では、ワクチン効果を示さない病原菌(Edwardsiella tarda)も使用し、脾臓内におけるLym C形成やT細胞増殖について調べ、Lym Cが抗原提示を担う免疫微小環境である可能性を追求する。 2. ZAP-70陽性細胞がヘルパーT細胞サブセットであるかを確認する。CD4遺伝子を標的としたin situハイブリダイゼーションや抗ヒラメCD4抗体(新規に作製)を用いた免疫組織化学染色による検出を試みる。 3. 抗原提示細胞とT細胞を同時検出する免疫二重染色を実施し、異物注入により誘導されるLym C内で抗原提示に伴う細胞の接触について確認する。 4. Lym Cが誘導される時期の脾臓におけるT細胞関連遺伝子の発現状態を調べ、誘導されるヘルパーT細胞のサブセットについて考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の蔓延防止に伴い学会がオンライン開催となったことから旅費の支出がなかったこと、実験で使用する器具(マイクロピペット用チップ)の国内在庫が不足したため入手できなかったことから、次年度使用額が生じた。対面での学会が開催されるようになれば参加し、実験器具については長期的な計画を立て、研究に支障のないように購入していく。
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