研究課題
基盤研究(C)
シジミの貝殻の色は,黄色系と黒色系に分けられる。日本の在来種である3種類のシジミについて,貝殻の色が黒色化する原因物質を主に分光法を用い詳細に調べた。その結果,石灰質層の上にある有機物膜(殻皮)に,鉄-ジヒドロキシフェニルアラニン錯体(Fe-DOPA錯体)が形成されることで貝殻が黒くなることを明らかにした。また,Fe-DOPA錯体は,水環境から殻皮に拡散した溶存有機-Fe錯体の配位子交換によって形成されることを明らかにした。これは,生息環境が殻皮の色を決定する重要な要因であることを示している。
X線分析
本研究は,黄色を帯びた貝殻のシジミは砂地で,黒色を帯びた貝殻のシジミは泥地で育つ傾向にあるという,これまで経験的に知られていた知見に対し,初めて科学的な分析と検討を行ったものである。黒色化の原因物質の同定と形成化メカニズムを解明したことで,貝殻の色から,生育環境履歴を読み出すことができるようになる。これにより,シジミの成長に最適な底質環境を明らかにすることが可能となり,資源復活への貢献が期待される。