研究課題/領域番号 |
21K05800
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
中曽根 勝重 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (10366411)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ガーナ / 営農構造 / 生計メカニズム / 食料安定供給 / 所得向上 / 持続的発展プログラム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、市場経済化の影響により経済成長が加速するガーナの農業部門に注目し、小農の営農構造と生計メカニズムの変容を分析した上で、農民の抱える的確な問題を抽出し、安定した食料供給システムの確立と所得向上のための開発方途を探り、営農改善ならびに地域社会・経済の持続的発展プログラムの形成に直結した研究手法の構築を目指すことである。 初年度である令和3年度は、コロナ禍の影響により、本研究の活動の中心になる現地調査を実施できなかった為、先行研究のサーベイと現地調査協力機関との情報交換を行った。 ガーナは2010年に中所得国の仲間入りを果たし、順調に経済成長を続けていたが、ここ数年はコロナ禍の影響により国内経済が不安定な状況にある。特に2000年代以降、早急に改善が望まれる問題として取り上げられてきた都市部と農村部の経済格差の拡大は、いっこうに収まる傾向は見られていない。こうした状況下で、ガーナの農村部では、市場経済化の影響により現金の使用頻度が増えたことから、現金稼得の機会創出を目的とした栽培作物の絞り込みが進み、単作および連作により収量が不安定になってきている。一方、土地不足や若年層の離村を起因とした農業者の高齢化がみられる農村も現れるようになり、深刻な労働力不足を抱えるケースも増加傾向にある。 こうした問題を改善するためには、食料安定供給と所得向上のための栽培体系を検討し、かつ効果的な投入財(化学肥料・農薬・機械)の利用による収量の増加・収益性の向上を確立することが望まれる。 今後の課題としては、現地調査により、①安定した食料供給を実現するための作物選択・技術体系の確立、②所得向上のため作物選択・収益性向上の達成、という2つの軸を考慮した営農体系を検討し、さらにパイロット試験とその評価を実施して、営農改善ならびに地域社会・経済の持続的発展プログラムの形成を目指した研究活動を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の初年度は、調査対象地域の関係資料・文献の収集による先行研究のサーベライズを行うともに、現地調査を実施することであった。しかし、コロナ禍の影響により、現地調査(予備調査)は中止・延期とした。 現地調査を中止したため、①本調査を効率的に実施するための研究環境整備、②調査対象農村/事例調査対象農家の選定、③小農の農業生産技術/営農体系と農業経営/生計メカニズムの実態把握、を行うことはできなかった。 現段階では、①小農の営農構造と生計メカニズムの実態とその変容の把握に関する情報は不足しており、また②食料安定供給と所得向上のためのパイロット試験とその評価を行うための調査対象農村/対象農家も未選定である。 上記のように、本研究の中心的な活動は未実施であり、早急な現地調査の実施と調査結果の分析を進める必要がある。以上のことから、研究の達成は、「大幅に遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度以降は、令和3年度と同様に、資料・文献収集と先行研究のサーベライズを実施するとともに、現地調査を行う。現地調査では、令和3年度に選定を予定していた調査対象農村および事例調査対象農家の選抜を行い、「小農の農業生産技術/営農体系と農業経営/生計メカニズムとその変容」を把握するための面接・アンケート調査を実施する。アンケート調査結果はできる限り現地で可及的にパソコン入力・整理を行い、調査データを確認しながらの現地調査を実施する。 さらに令和4年度は、「食料安定供給に向けた作物」と「所得向上に向けた作物」の選抜を行った上で、試験協力農家に種子・化学肥料などの投入財を配布し、パイロット試験の実施を依頼する。パイロット試験の栽培結果と販売実績などの結果は、調査協力機関と連携して入手し、その試験結果から食料の安定供給と作物販売による所得向上の可能性について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、令和3年度の現地調査を予備調査と位置づけて計画をしていたが、コロナ禍の影響により、現地調査の実施が難しかったため、当初予定していた調査を中止したことで経費の全てが未使用であった。 次年度使用額の使用計画は、令和4年度に、令和3年度に予定していた予備調査と本調査を合わせて実施するため、調査期間を延長し、かつ現地での研究協力者の確保を強化したいと考えている。そのため、出来るかぎり長い滞在での調査実施にかかる経費の増額を計画している。
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