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2022 年度 実施状況報告書

バイオ燃料に関するエネルギーと食料のバランス:時系列と一般均衡モデルによる検証

研究課題

研究課題/領域番号 21K05805
研究機関摂南大学

研究代表者

郭 進  摂南大学, 経済学部, 教授 (20582365)

研究分担者 田中 鉄二  摂南大学, 経済学部, 准教授 (40803482)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードバイオ燃料 / 食料価格 / 因果関係 / アフリカ諸国 / 食料安全保障
研究実績の概要

本年度の研究実績に関して、エネルギー経済学分野のトップジャーナルに3本の論文を掲載しました。研究の概要は以下の通りです。
1本目の論文は、バイオ燃料生産の急増がエネルギーと食料安全保障にどのような影響を与えるのかをアプローチしたものです。バイオ燃料の価格とその原料となる食料価格がどのように連動しているかについて、パーシャル・ウェーブレット解析を用いて実証しました。分析の結果、バイオエタノールとトウモロコシの価格には、短い周期で強い相関関係があることが判明しました。この論文は、米国のバイオ燃料政策が自国のエネルギー自給率を高める一方、資源配分の効率性と食料安全保障に悪影響を与える可能性があることを示しました。この研究の成果は、エネルギー経済学分野のトップジャーナル「Energy Economics」に掲載しました。
2本目の論文では、バイオ燃料の生産量、農産物への金融投機、国際エネルギー価格、国際食料価格などの要因がアフリカの食料価格指数との関連性を時変パラメーターベクトル自己回帰モデルで分析しました。その結果、米国のバイオ燃料生産がアフリカの食料価格に大きな影響を与えることを示しました。アフリカ諸国は、食料の多様化や自給率向上などの対策を取る必要があると提言しました。この論文も「Energy Economics」に掲載されました。
3本目の論文は、米国のバイオディーゼル、原油、大豆の価格に関する共変動と因果関係について、ウェーブレットと時変パラメーターベクトル自己回帰を用いて分析しました。主な結果として、バイオディーゼルと大豆の価格には因果関係があることが明らかになりました。また、原油とバイオディーゼルが大豆の価格に伝達効果を持つことも確認されました。この研究は、バイオ燃料の国際専門誌「GCB Bioenergy」に掲載されました。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1. バイオ燃料の生産とエネルギー、食料の価格などの因果関係に関する研究を完成し、その研究成果を高いインパクトファクターを持つ国際学術専門誌に3本掲載しました。
2. バイオ燃料の生産増加がアフリカ諸国での食料不足による暴動に与える影響について、ポアソン回帰モデルを用いて分析しました。その結果、米国のエタノール生産がアフリカでの食料不足による暴動の可能性を高める一方、バイオディーゼル生産は暴動との関連性が弱いことが明らかになりました。この研究成果は学術専門誌に投稿しました。
3. バイオ燃料の生産増加が、食料とエネルギーの関係をより緊密にしたかどうかについて、混合データサンプリングモデルを用いて検証しました。その結果、アメリカのエタノール生産によって原油とトウモロコシの価格の相関性が強まったことが示されました。この論文は国際専門誌に投稿されました。
4.アメリカのエネルギー政策法によるバイオ燃料の増産が、長期的にエネルギーと食料価格にどのような影響を与えるかについて、現在論文を作成しています。完成した論文は国際学術専門誌に投稿する予定です。

今後の研究の推進方策

1.研究分野の拡大
ウクライナ危機を背景に、食料価格が高騰し、食料の輸入をロシアとウクライナに大きく依存している国々では、食料不足による社会的・政治的混乱が懸念されています。このような状況下で、計量経済モデルを用いてバイオ燃料生産が食料不足による暴動に与える影響を分析することは非常に重要です。この研究は、アジアやアフリカ諸国の政策立案者や国際機関にとって、食料安全保障政策の策定に役立つ貴重な情報を提供することが期待されています。
2.多様な研究手法の導入
時変パラメーターベクトル自己回帰モデルや確率応用一般均衡(CGE)モデルを用いることで、発展途上国における食料価格とバイオ燃料生産の相互依存関係をより詳細に定量化することができます。このようなモデルの導入は、研究の妥当性を高め、研究成果の信頼性を向上させることにつながります。また、エネルギー価格と食料価格の上昇が、アジアやアフリカ諸国の経済に与える影響を分析することで、国際開発政策の立案に役立つ情報を提供することもできます。
3.研究成果の海外展開
国際会議やカンファレンスなどで研究成果を報告し、海外の同じ分野の研究者とコミュニケーションを取ることで、最新の研究動向を把握し、共同研究の契機を作ることができます。また、そこで得られた意見や助言を元に研究内容を充実させることができるため、研究の質の向上につながります。さらに、研究成果が実際の政策立案に影響を与えることがあるため、国際的な学術誌での発表は非常に重要です。これにより、より広い学術コミュニティーに研究成果を発信し、海外での評価も得ることができます。

次年度使用額が生じた理由

1.研究進行中に問題が起きた場合、同じ分野の研究者から積極的にアドバイスを求める予定です。この場合、研究協力者に謝金を支払う必要があります。
2.本研究の成果を国内および国際の学会で発表し、それを政策提言につなげるためには、国内および効率的な研究を実現するために、研究資料の整理やデータ入力などの作業を研究助手に依頼する予定です。そのため、人件費および協力者に対する謝金が必要です。
4.本研究で得られた成果は、レフェリー制度のある国際学術専門誌に投稿するために、英文校正費用および投稿料が必要となります。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] Price interconnection of fuel and food markets: Evidence from biodiesel in the United States2023

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Tetsuji、Guo Jin、Xiufang Wang
    • 雑誌名

      GCB Bioenergy

      巻: 15 ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Energy security versus food security: An analysis of fuel ethanol- related markets using the spillover index and partial wavelet coherence approaches2022

    • 著者名/発表者名
      Guo Jin、Tanaka Tetsuji
    • 雑誌名

      Energy Economics

      巻: 112 ページ: 106142~106142

    • DOI

      10.1016/j.eneco.2022.106142

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Do biofuel production and financial speculation in agricultural commodities influence African food prices? New evidence from a TVP-VAR extended joint connectedness approach2022

    • 著者名/発表者名
      Guo Jin、Tanaka Tetsuji
    • 雑誌名

      Energy Economics

      巻: 116 ページ: 106422~106422

    • DOI

      10.1016/j.eneco.2022.106422

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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