戦後日本の基本法農政のモデルとされた西ドイツの農業構造政策は、かねてより「成功」と評価されてきた。しかしその歴史的文脈についてはこれまでほとんど論じられてこなかった。本研究は、その「成功」の長期的要因として景観計画に基づく「合理的な」農村空間建設の経験が重要だったのではないか、そのより深い理解のためには欧州史・環境史・社会史という複眼的な視点からの長期的分析が有効ではないかという観点から、ナチス期から戦後東西ドイツにいたる農業開発史の歴史的文脈をあきらかにする。これにより本研究は20世紀中葉の「現代農業革命」についての新たな歴史的理解のみならず、戦後日本農業の比較史研究に資するものと考える。
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