研究課題/領域番号 |
21K05814
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
武藤 幸雄 香川大学, 農学部, 准教授 (90596123)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 契約論 / モラルハザード / デザイン論 / 経験学習 / 技能 |
研究実績の概要 |
2021年度における研究成果は以下の三点にまとめられる. 1.本研究では,スマート農業技術のサービスを供給する事業体と,それを利用する農業者の協力促進につながるような,両者間の報酬分配形態を検討するためのモデル分析を進めた.この分析によって,両者間の協力を促進できるような報酬分配の特徴を具体的に示すことが可能になった.この研究成果は以下の論文に著されて発表された.武藤幸雄「害虫管理支援サービスに関する契約論的分析―スマート農業技術の利用事例に基づく分析―」,『農業経済研究』93(3),pp.295-300,2021年12月.
2.スマート農業技術サービスの開発と普及にあたっては,サービス提供者,営農指導機関が,サービス利用者の立場を踏まえてきめ細かなサービス対応,営農指導をおこなうことが求められると考えられる.本研究では,デザイン論とナレッジマネジメント論を援用することによって,そのサービス,営農指導の望ましいあり方について詳細に検討を進めた.この考察結果について本研究は以下の形で口頭報告を行った.武藤幸雄「スマート農業技術の開発と普及に関する検討課題―デザイン論,経営組織論の観点から―」,2021年度地域農林経済学会四国支部大会口頭報告,2022年1月,於香川大学.
3.本研究では,スマート農業技術のサービスを利用する農業者が,営農技能に関する経験学習をいかに進めるかについてモデル分析を進めた.この分析に依り,スマート農業技術サービスの利用に伴って農業者がその技能水準をいかに変化させ得るかについて経済学的説明をおこなうことが可能になった.本研究は,この分析結果について以下の形で口頭報告を行った.武藤幸雄「スマート農業技術の採用と経験による学習の戦略に関するモデル分析―学習効果の移転可能性に注目して―」, 2022年度日本農業経済学会大会報告要旨,2022年3月,オンライン開催.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.2021年度に本研究は,病害虫管理に関わるスマート農業技術サービスを供給する事業体と,それを利用する農業者の協力促進につながるような,両者間での報酬分配形態について理論分析結果を得ることができた.農業者が病害虫管理に関わる耕作技能を引き上げていく上で,きめ細かく病害虫管理を進めようとするインセンティブが農業者に与えられているかが重要になる.本研究は,農業者のこのインセンティブがスマート農業技術サービス提供者との関係に影響を受けながらどのように決まるかについて大規模な実態調査を行いたいと構想している.2021年度に本研究はその調査準備に着手することができなかった.
2.2021年度に本研究は,スマート農業技術のサービス機能が向上していく際に,農業者が営農技能に関する経験学習の行動をいかに変化させ得るかについてモデル分析をおこなった.この分析結果をもとにして,本研究は,農業者がスマート農業技術のサービスをいかに選択し,そのサービスに応じて技能形成・獲得をいかに進めているかについて仮説構築をおこない,大規模な実証分析を行いたいと構想している.2021年度に本研究はこの仮説検証のための実態調査を実施する準備に着手することができなかった.
3.2021年度に本研究は,スマート農業技術のサービス利用者がそのサービス機能をより多く享受できるようにするために,スマート農業技術のサービス提供者や営農指導機関はその技術開発・普及体制をいかに構築すべきかを考察した.ここで考察した技術開発・普及体制に求められる要件が,スマート農業技術に関わる農業生産の現場においていかに満たされつつあるかについて,本研究は大規模な実態調査を行いたいと構想している.2021年度に本研究はその調査準備に着手することができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
1.2022年に本研究は,以下の論点について説明できるように仮説構築をおこなう.第一に,農業者が,病害虫管理に努力するインセンティブが,スマート農業技術サービス提供者との関係に影響を受けながらどのように決まっているかについての仮説構築である.第二に,農業者がスマート農業技術のサービスをいかに選択し,そのサービスに応じて技能獲得をいかに行っているかについての仮説構築である.第三に,スマート農業技術のサービス利用者の便益改善に資するようなスマート農業技術の開発・普及体制のあり方に関する仮説構築である.
2.2022年度に本研究は,これらの仮説を検証できるようにするため,アンケート調査を実施する計画を進める.このアンケート調査票を作成するほか,調査に協力してもらえる農業者,農業団体,スマート農業技術のサービス提供企業を探してできるだけ多く確保する.
3.調査協力先を十分に確保できることが見込まれたら直ちに上記のアンケート調査を実施し,その調査結果を回収する.そして,調査結果に関する統計解析をおこない,上述の仮説に関する検証作業を進めて,その分析結果を整理して学術論文にまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度には,スマート農業技術のサービスを利用する農業者の行動に関する実態調査を多数行う計画を構想していた.しかし,実際には少数の実態調査にとどまったため,謝金支払いも少額にとどまったことから,次年度使用額が生じた.2022年度には大規模な実態調査を行う計画を構想しているため,この次年度使用額は謝金支払いが増えることによって解消されると見込んでいる
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