研究課題/領域番号 |
21K05823
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
細山 隆夫 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主席研究員 (50526944)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水田農業 / 北海道 / 北陸 / 大規模経営 / 農村集落 / 消滅集落 |
研究実績の概要 |
令和4年度における結果の概要は以下の通りである。 北海道水田農業:上川中央地域・当麻町では40~60a区画の圃場条件下,離農離村と大規模経営の展開が著しいが,それが特に激しいA地区では全世帯が消えたB消滅集落も発生してきている。だが,それは通い作の大規模水田経営群による購入も含めた農地集積の結果でもあった。そのなか,B消滅集落の内実として,経営耕地も皆無―売買により所有権も削られ―となるうえ,離農離村者が残した家屋・納屋も解体,倒壊や売却が支配的であった。同時に,A地区を1単位とした集落の統合・再編も計画されているが,それでも先行き残る農家はB消滅集落の隣接集落から通い作を行う大規模経営1体のみとなることが予想されている。このなか,同経営体は統合集落の農事組合長の恒久的請負も想定する。 北陸水田農業:新潟県上越市三和区では大区画圃場整備が進行し,農地流動化が活発である。このなか,最大規模の経営体=法人の展開としては所在集落に経営耕地の大きなウエイトがあり,かつ同集落耕地の大部分を集積していた。この所在集落は離農が顕著に進む一方,農地の受け手は同経営のみであることから,同法人は大面積農地の集積,しかも面的集積を実現していた。こうして,農村集落レベルにおける大区画圃場の農場制農業が実現された実態にある。あわせて,①所在集落内では集落全農地の集積も間近い。つまりは法人による1集落の完全な農場制農業=一集落一農場体制の成立が見込まれる。②言い換えると,同経営は集落内=農家組合内としても唯一の営農者となる。こうして,一集落一農場の成立は同経営が農村集落の農地利用面,農家組合―組合長として―運営面でも主導権を握ることも意味するのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道水田農業:同地域に関する検討は概ね順調に進捗してきている。上川中央地域・当麻町では離農離村が激しいもと,消滅集落では大規模水田経営群の購入も含めた農地集積が経営耕地も皆無とさせるうえ,離農離村者の家屋・納屋にしても解体,倒壊の状態や売却という状態にあった。すなわち,離農離村者では農地以外の痕跡も消えていくことを示した。同時に,特定の大規模経営1体のみが統合集落内での農家=営農者となること,かつ農事組合長の恒久的請負も可能なことも示しえた。 北陸水田農業:ほぼ順調に進捗してきている。上越市三和区では農地の借り手市場,かつ大区画圃場条件下,特定大規模借地経営の特定農村集落での農場制農業への展開動向と,同農業の帰着点が及ぼす集落と借地経営との関係の方向性を明らかにした。具体的には次のようにある。①最大規模の法人経営が所在する集落耕地の大部分を集積していた。②近い将来,同法人による一集落一農場体制の成立が見込まれた。③その際,一集落一農場の成立は同法人=集落という関係の形成であり,換言すると同経営が集落の運営面でも農家組合長として主導権を握ることも示した。 ただし,最近の農業経営基盤強化促進法の改正により,人・農地プランから地域計画への移行,また先行き相対による利用権設定の廃止も決定されている。これらが北海道,北陸の対象地域における農地流動化,大規模経営展開に及ぼす影響が問われ,単年度ではあるが追究の必要性が生じている。 なお,北陸では新潟県新潟市における協業法人の所在集落における農地集積状況の本格的調査が遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
北海道水田農業:上川中央地域・当麻町における離農離村や離村者の家屋・納屋等の動き,および大規模水田経営における農地集積の動きを継続的に行う。また,相対による利用権設定の廃止等が先行き地域における農地流動化,大規模経営の農地集積に及ぼす影響に関する調査と分析を実施する。 北陸水田農業:①新潟県新潟市では協業法人の本格的調査ができなかった。そのため,あらためて同協業法人の所在集落における農地集積進行が集落内他農家との農地利用調整の自由度や,集落組織(農家組合等)に及ぼす影響を分析する。また,10a区画主体であって圃場整備水準が高くない条件下,農道・用水路等の地域農業資源管理を巡る同法人と集落との関係も把握する。②新潟県上越市三和区では全農家が離農し,入り作の大規模借地経営群により集落耕地の全てが集積されていた集落(前年度までに分析・検討済みの集落)を対象としつつ,入り作借地経営群が今後集落農家組合の運営上等でどのような役割を担うことになるか調査・検討する。③また,上越市では相対による利用権設定の廃止等が先行き大規模借地経営の農地集積に及ぼす影響を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように,新潟県新潟市における協業法人の本格的調査実施ができなかった。これは訪問調査を予定していた期間に体調不良による通院が続き,それに伴って訪問できずに残額が生じたしだいである。この点につきましては,たいへん申し訳なく思ってございます。今年度は体調を整えて,訪問調査を着実に実施する予定である。
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