研究課題/領域番号 |
21K05827
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
坂井 勝 三重大学, 生物資源学研究科, 講師 (70608934)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 土壌水分量 / 地表面温度 / UAV / 放射温度計 / 数値シミュレーション / 空間分布 |
研究実績の概要 |
大規模化された農地において,多収阻害要因である乾燥害を避けるために最適な灌漑・施肥計画を行うには,根圏の土壌水分量の空間分布に把握する必要がある.本研究の目的は,サーモグラフィーを搭載したUAVを用いて畑地の地表面温度を面的に観測し,土壌水分・熱移動の数値シミュレーションを組み合わせ,根圏の土壌水分量の空間分布を予測する手法を構築することである. 令和3年度は,三重大学附属農場内のダイズ栽培圃場において現場観測を行った.圃場内の各深度,各水平位置に土壌水分・地温・ECセンサーを設置し,20 m×20 mの圃場における土壌水分量の空間分布の観測を行った.その結果,本実験圃場は南側に水が溜まりやすい傾向が示された.一方で,サーモグラフィー登載のUAVにより,地表面温度分布の撮影を定期的に行った.無降雨が続き土壌乾燥が進行する過程において,土壌水分量が低く蒸発による潜熱消費量が小さい圃場北側では温度が高く,逆に土壌水分量が高い圃場南側では温度が低い結果が得られた.ここから,UAVによる地表面温度測定から,土壌水分量の空間分布を評価できる可能性が示された. また圃場内に設けた裸地区画において,赤外放射温度計を用いた土壌面温度の連続測定を行った.土壌乾燥が進行し蒸発速度が低下するほど,土壌面温度は上昇した.気象データを反映した地表面熱収支式を含む土中水分・熱移動の数値シミュレーションを適用することで,土壌面温度の上昇を再現する低水分領域の不飽和透水係数の推定を行った.推定した透水係数を用いた数値計算は,土壌水分量や地温変化の測定値をよく再現した.ここから,土壌面温度の観測から,土の不飽和透水係数が推定できる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の進捗状況としては,おおむね順調に進展していると言える.本研究の最終的な目的は,サーモグラフィー登載UAVによる畑地の地表面温度観測と,土壌水分・熱移動の数値シミュレーションを組合せ,畑地の土壌水分量の空間分布を予測することである.その中で,研究対象圃場の土壌水分量の空間分布を土壌水分センサーを用いて実測し把握することができた.また,サーモグラフィー登載のUAVを用いて地表面温度の空間分布を観測し,その観測精度を確認することができた. 一方で,赤外放射温度計を用いて裸地区画の土壌面温度の観測を行い,数値シミュレーションを適合することで,低水分領域の土の不飽和透水係数が推定可能であることが示された.また,ダイズ植生上にも同様に赤外放射温度計を設置し,群落温度の変化を観測することができた.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,比較的湿潤な圃場南側と乾燥した圃場北側の,ダイズ栽培区画と裸地区画の計4か所に赤外放射温度計を設置し,土壌面温度および群落温度の連続観測を行う.そして,土壌乾燥にともなう土壌面・群落温度の上昇に対して数値シミュレーションを適用し,土の不飽和透水係数,および根の吸水ストレスを表すストレス応答関数の推定を行う. サーモグラフィー登載のUAVの観測は引き続き定期的に行う.特に土壌乾燥期間においては1日に複数回の観測を行い,不飽和透水係数やストレス応答関数の推定に有効な測定時間および測定回数について検討を行う. 不飽和透水係数やストレス応答関数の推定には,地表面温度の実測値に対して数値シミュレーションの計算値を適合する逆解析手法の開発が必要である.そこで,土中水分・熱移動予測プログラムHYDRUS-1Dとパラメータ推定ソフトウェアPESTの連結を行う.
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