研究課題/領域番号 |
21K05829
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
石井 将幸 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (50293965)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 管路更生工法 / 接触解析 / 複合管設計 / 付着強度 / 境界面剥離 |
研究実績の概要 |
管路更生工法に現在用いられている設計法の問題点として、既設管と更生部材(内管)の相互作用が極めて単純化されているという点を挙げることができる。管路更生工法の中でも構造計算に複合管設計を用いる製管工法では、既設管と更生部材の一体性の評価、特に剥離が生じる荷重の把握が求められる。SPR工法による更生管を対象として、試験で測定した引張方向とせん断方向の付着強度を考慮した接触解析により、既設管と更生部材の一体性が保たれた段階の挙動、両者の剥離と剥離の伝播、剥離後の挙動のすべてを再現できる解析手法を構築した。 まず境界面が完全に一体化していると仮定した解析と、まったく付着していないと仮定した解析を行ったところ、一体化した更生管の方が高い剛性を発揮することがわかった。一体化している場合は、既設管と補強部材が一体の厚いはりとして曲げを受ける一方、付着がない場合は二重ばりのように働く。両者の曲げ剛性の違いが、変形量の差異の原因になっていると考えられる。 続いて実測で得られた付着強度を100%とし、付着強度を10%から100%まで変化させた解析を行った。付着強度75%と100%では荷重と変位の関係が完全一体化のものと一致し、変位と反力のかなり大きい領域まで境界面の剥離が生じないことが示唆された。付着強度が50%より小さい場合には、載荷の過程で境界面に剥離が生じ、更生管の剛性が低下することがわかった。剛性の低下量は付着強度によって異なり、25%と50%の場合では剥離が局所的な状態にとどまること、10%と15%では全体的な剥離が生じ得ることが明らかになった。つまり付着強度が小さい場合は初期剥離の発生箇所から剥離の伝播が生じ、その程度も付着強度によって影響されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に導入した解析ソフト(Femap with NX Nastran)を用いて、境界面の剥離と剥離後に生じる接触を考慮できる解析モデルの構築を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
解析に用いているソフトは金属材料を用いた機械の接触解析を主用途としたものであるため、鉄筋コンクリート構造である既設管や、これを更生した更生管の解析に適したものとは言いがたい。解析の精度と信頼性を実用レベルに高めるためには、今後の研究期間においてコンクリート、裏込めモルタルや鉄筋の材料モデルを構築し、解析モデルに組み込む必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
ソフトウェアの代金が予想より安価であったため、残額を研究の進捗を待っての活動に充てることとした。具体的には、接触解析の結果と比較する弾性解析や破壊解析のソフトウェアの保守費用、研究成果の公表、関連する分野における研究動向の調査、海外における更生管設計手法に関する文献収集に充てる。
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