令和5年度は①カット青果物の過冷却保存が生菌数変化に与える影響、②ホール果実の過冷却保存の実現可能性について測定・検討した。 ①では、カット青果物を実験区(-2 ℃)とコントロール区(5 ℃)の条件下で12日間保存し、菌数(一般生菌数、大腸菌群数、Pseudomonas属細菌数)、理化学的特性(目減り、色彩色差、硬度、pH)、官能試験の結果を比較・検討した。その結果、カット青果物を-2 ℃で保存すると全サンプルが過冷却状態を保つことが示された。次に実験区の菌数は生鮮試料と比較して同等以下となり、理化学的特性は実験区が生鮮試料の値に近い値を呈し、官能試験では実験区がコントロール区より秀でた結果を示した。すなわち、カット青果物を-2 ℃で過冷却保存を行うことで、生菌数・品質劣化が抑制され、商品性も保たれるといった利点が示され、このことは今後の本法の実用化に資する知見となる。 次に②では、ブドウ果実を用いて-5℃で過冷却試験を行い、電気インピーダンス法により得られたCole-Cole plotと試料温度履歴データを一果ずつ検討した。その結果、電気インピーダンス法により試料の過冷却成功/解消の判別が可能となること、更に、実験区とコントロール区の試料の品質を計測したところ、凍結濃縮に起因する酵素反応の有無により過冷却成功/解消の評価も可能となることを見出した。以上、本研究はホール果実を「生きた状態」で過冷却保存できることを明らかにし、過冷却成功/解消試料の判別評価できる技術について提案するもので、本法の現場への導入が期待される。 更に令和5年度は、ライフサイクルアセスメント手法により得られたこれまでの知見を整理し、追熟モモの保存流通時の食品ロス抑制が、生産段階の環境負荷削減に大きく貢献できることを数値化した。
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