研究課題/領域番号 |
21K05846
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
高橋 一義 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (00332651)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | LiDAR / レーザ入射角 / レーザフットプリントサイズ / 茎葉鉛直分布 / 草丈 / 茎数 |
研究実績の概要 |
ローンレーザセンシング(LiDAR)による水稲生育測定手法の汎用化には,レーザ光が水稲群落へ入射する条件に(計測条件)より記録されるレーザ計測点の鉛直分布(点群の鉛直分布)が変動する性質を理解する必要がある. 本研究では,水稲群落の茎葉鉛直分布と計測条件からレーザ計測される点群の鉛直分布を推定する群落数理モデルの開発し,これまでに開発した水稲の草丈・茎数を推定するLiDAR計測基礎手法の汎用化を目指す. 当該年度は,水稲群落の茎葉鉛直分布の効率的な測定方法の模索と防水ドローンと非測量用途のLiDARを用いたUAV-LiDARシステムの構築に取り組んだ. 研究協力が得られた農家の水田において6月から7月の間,およそ10日間隔で既有するUAV-LiDARシステムにて水稲群落のLiDAR計測を実施しながら水稲群落の茎葉鉛直分布の測定方法を模索した.鉛直分布の測定では,高さ10cmを1つの層とし,層ごとに葉と茎の面積と乾燥重量を測定した.5回の測定機会があり現地における効率的な作業手順を確認できた. UAV-LiDARシステムの構築に関して,廉価なGNSS/INSを利用したLiDARシステムの開発に取り組んだ.当初導入予定であったドローンシステムの価格改定のため,代替品の調達を模索しながらLiDARシステムの開発を先行する形で取り組んだ.ただ予算に見合う代替製品が見当たらず,独自のUAV-LiDARシステムの構築には至らなかった.しかし関係機関と調整の結果,市販のUAV-LiDARシステムを本研究に利用可能な状況となった.このため,当初計画を市販のUAV-LiDARシステムで実施することにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに研究協力が得られた農家の水田(JAの指標田)において,6月から7月にかけておよそ10日間隔で既有するUAV-LiDARシステムにより水稲群落のLiDAR計測を実施し,これに同期する形で10cmの層ごとに葉と茎の面積と乾燥重量を測定した.LiDAR計測で取得した点群鉛直分布にLiDAR計測基礎手法を適用し草丈・茎数を推定したところ茎数をうまく推定できなかった.これは従来よりも高い高度でLiDAR計測を実施したことが影響したためと推察される.レーザのスポットサイズを考慮した計測高度設定の必要性を確認した. 現地にて層ごとに水稲の葉と茎を分割した際,乾燥により葉が丸まる現象に対処するため,薄手のアクリル板で切断した葉を挟む方法により面積計測を実施した.その後,試料を乾燥炉内に24時間静置し乾燥重量を測定した.葉に関しては面積と乾燥重量の間に指数関係が見られた.今後は1つの株について面積と乾燥重量を調べ,他の株については乾燥重量から面積を換算することで,面積の鉛直分布に関する情報を多く収集する予定である. UAV-LiDARシステムの構築に関して,廉価なGNSS/INSを利用したLiDARシステムの開発に取り組んだ.しかし年度途中で当初導入予定であった防水ドローンシステムの価格改定があり,当初予算内での機器調達が難しい状況となった.代替製品の調達を模索しながら,LiDARシステムの開発に先行して取り組んだ.ただ予算に見合う代替製品が見当たらず,独自のUAV-LiDARシステムの構築には至らなかった.しかし関係機関と調整の結果,市販のUAV-LiDARシステムを本研究に利用可能な状況となった.そこで,当初独自ドローンシステム構築に充てる残予算を市販のUAV-LiDARシステムの利用に不可欠な環境整備等に執行した.今後は,当初計画を市販のUAV-LiDARシステムで実施する.
|
今後の研究の推進方策 |
UAV-LiDARシステムによる水稲の点群記録では,レーザフットプリントサイズとレーザ入射角の設定が重要である.レーザフットプリントサイズは飛行高度に,レーザ入射角はLiDARのピッチ角に応じて変化する.これまで研究結果において水稲の点群の鉛直分布の変化が生育にともない変化し,草丈・茎数の推定結果が良好であたLiDAR計測時のレーザフットプリントサイズを参考に,同一水稲群落に関して,フットプリントサイズの影響を検討するデータをLiDAR計測により取得する. またドローンレーザ計測と並行して実施する水稲群落の茎葉鉛直分布では,調査株数を4に増加させる.この内,1つの株について葉の面積と乾燥重量を層別に測定し,残り3株については層別の乾燥重量から葉の面積を換算する方法とする.レーザ計測期間は出穂直前までとし,この期間に約10日間隔で5回の計測を予定する. 水稲群落の3D点群の鉛直分布を推定する数理モデルの開発については,レーザ光が鉛直入射する条件下において,鉛直分布の再現性を高めることに取り組む.この際,ドローンレーザ計測と水稲群落の茎葉分布を用いて,モデルパラメータのチューニングを実施する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の防水ドローンの価格改定があり,代替製品の調達を模索したものの当初予算内でドローンシステムの調達が難しい状況になった.代替製品の模索と並行して関係機関と市販ドローンLiADRシステムの利用について調整した結果,本研究に市販ドローンLiDARシステムの利用が可能となった.これにより,予定通りに水稲群落のLiDAR計測を実施する見込みがついた.なお,市販ドローンLiDARシステムを利用するために不可欠な環境整備等に研究予算を執行する予定である.
|