研究課題/領域番号 |
21K05860
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
日高 功太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 主任研究員 (80547232)
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研究分担者 |
三好 悠太 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主任研究員 (60855724)
岡安 崇史 九州大学, 農学研究院, 教授 (70346831)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | RIイメージング / イチゴ / 気候変動 / 転流制御 / フェノタイピング |
研究実績の概要 |
本研究は,以下の3課題から構成される.「課題Ⅰ:RIイメージング技術を用いた転流制御条件の解明(R3~4年度)」,「課題Ⅱ:オンサイトフェノタイピング技術のプラットフォーム構築・解析手法の開発(R3~5年度)」,「課題Ⅲ:課題Ⅰ・Ⅱに基づく転流制御技術の開発とその効果の検証(R4~5年度)」 R4年度の実績として,課題Ⅰでは,葉の積算光合成量や摘果の有無がイチゴ植物体内の光合成産物の転流に及ぼす影響について,生きた植物体内の栄養元素の動態を可視化し定量的に解析できるポジトロンイメージング技術(PETIS)とポジトロン放出核種11Cを用いて評価した.PETISの撮像視野内にイチゴ果実をセットし,果房直下葉に11CO2を投与して,葉から果実への11C標識光合成産物の転流動態を撮像した.得られた画像より,イチゴの同化葉の積算光合成量が増加すると,果実への11C標識光合成産物の転流速度および転流量が増加することが確認された.また,摘果によって相対的に他果実のシンク強度が高くなり、光合成産物の転流が摘果前と比較して促進されることが示唆された. 課題Ⅱでは,オンサイトにおけるイチゴの生育特徴量(草高,葉面積等)の自動計測のために,低コスト汎用デバイス(ラズパイ,3Dカメラ等)を用いたオンサイトフェノタイピング装置のプロトタイプを制作してハウス内に導入し,装置の通路走行やマーカー認識による装置動作制御等の試運転と画像データ自動取得解析のためのプログラム作成を行った. 課題Ⅲでは,課題Ⅰの結果に基づいて葉の積算光合成量の増加による果実への転流促進を目的として葉近傍のみへの局所CO2施用を行い平均果重や収量性に及ぼす影響を検証した結果,局所CO2施用によって無施用条件下と比べて果実の平均果重が重くなるとともに果実収量が増加した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R4年度の実績概要にも記載のとおり,課題Ⅰでは,イチゴ果実への転流促進につながる処理条件が得られている.課題Ⅱではオンサイトフェノタイピング装置のプロトタイプを制作して取得データの解析プログラムも作成済みである.また,課題Ⅲでは課題Ⅰで得られた結果に基づいて葉の積算光合成量の増加による果実への転流促進を目的とした葉近傍のみへの局所CO2施用を実施することで,平均果重の増加や増収効果を確認した. 以上のとおり,課題Ⅰ~Ⅲの研究実績が当所の予定どおり順調に進展しているため.
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今後の研究の推進方策 |
R4年度の研究実績に基づいて各実施課題の研究を推進する.課題ⅠのRIイメージング技術を用いた転流制御条件の解明については,当初R4年度で終了する計画となっていたが,果実への糖の転流制御(課題Ⅲ)のための更なる好適な処理条件の探索のためにR5年度も継続して実施する.課題Ⅱでは,低コスト汎用デバイスを用いて製作したオンサイトフェノタイピング装置のプロトタイプを改良することで,3次元画像データによる生育特徴量の自動計測のためのプラットフォームを構築する.また,生育特徴量の組み合わせ解析によって,「成り疲れ(草丈,葉面積等)」の定量的な指標化を検討する.課題Ⅲでは,ハウス栽培において,課題Ⅰで決定した処理条件に基づく転流制御のための局所環境制御(CO2施用,温度制御等)を実施し,転流促進の有無を確認するとともに,その効果(収穫期,果実品質への効果)を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
R4年度に計上していた人件費が不要となり、また、物品費についても購入予定物品の納期の都合により変更が生じたために、次年度使用額が生じた.なお,これらについてはR5年度の人件費や物品費にあてる予定である.
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