温度応答遺伝子の発現量を予測するモデルを構築するために、温度応答遺伝子の探索と群落内気温の観測を行った。温度応答遺伝子の探索は普通ソバを用いて行った。初年度は、自殖系統の中から高温耐性系統と高温感受性系統の選抜を行った。選抜してきた複数の系統を人工気象器および圃場にて栽培し、生育調査と各器官(葉・花・蕾)別のサンプリングを行った。2年目には各サンプルについてRNA-seqを用いた遺伝子解析を実施した。20度と30度の栽培条件で発現量に差が生じていた遺伝子群の中から、20の候補遺伝子を選抜した。3年目は栽培温度の変化に応じて遺伝子の発現量が変化するかなどの検証を行い、報告に向けたデータ解析等を現在進めている。これらの温度応答遺伝子を同定した後は、生育ステージごとに熱ストレスを与えた普通ソバのサンプルから遺伝子の発現量を定量しモデル構築に活用する。 群落内気温の観測は、遺伝子解析のために実施した圃場栽培と併せて実施した。普通ソバの群落内と群落外標準高度の気温差は日平均気温に換算するとその差は1度未満であった。水稲では約3度、大豆では約1.5度の差が生じることと比較するとその差は小さかった。同じ畑作物である大豆との差は草型や栽植密度の差によるものと考えられる。そのため、普通ソバの熱ストレスを緩和するための施策として、栽植密度の調整など栽培技術による対策も検討の余地があることが明らかとなった。
|