研究課題/領域番号 |
21K05862
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
檜垣 彰吾 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 上級研究員 (70595256)
|
研究分担者 |
松井 義貴 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 農業研究本部 酪農試験場, 主査 (40390851)
西浦 玲奈 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 研究員 (50849742)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ウシ / コンピュータビジョン / 骨格検出 / 跛行検知 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
畜産従事者の減少と牛群の大規模化により、牛一頭毎に割ける観察時間が短縮している。これに対し、申請者らは畜産従事者の代わりに牛を観察可能な技術としてコンピュータビジョン(人間の視覚システムが行っているタスクを自動化する技術)、特に骨格検出法に着目した研究を進めている。本課題では、骨格検出法を用いた牛の姿勢・行動変化の定量化技術を開発し、疾病の自動検知に応用可能か検討することを目的とする。 申請者らは本研究に先立ち、基幹技術となる牛用骨格検出システムの開発に取り組み、撮影された動画内に映っている複数頭を同時にトラッキングし、リアルタイム(25 fps程度)に体のキーポイント25カ所を検出可能なシステムを2020年度に開発した。本研究では、まず①上記牛用骨格検出システムの精度向上を行い、次に②骨格検出データに基づいた姿勢や行動の変化を精密かつ連続的に定量可能な技術の開発を行う。そして、最後に③実際の疾病罹患牛に対して②の手法を適用することで疾病の発見が可能かについて検証する。 本年度は、骨格検出システムの追加学習用データ5,674枚を作成(既存のものと合わせて計10,003枚)し、システムの追加学習を行った。その結果、キーポイントのアノテーション位置と推定位置とのズレは、追加学習前が平均38 pixelsであったのに対し、追加学習後は平均21 pixelsと大幅に改善された。また、当該システムを用い、健康牛と跛行牛を撮影した動画を解析した結果、跛行牛に特徴的な頭頚部における上下動の増大や患肢における遊脚期の延長・立脚期の短縮などを定量可能であることが明らかとなり、運動器疾患の検知に利用可能であることが示唆されたため知財化を図った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
農研機構および道総研で撮影した動画から、19,882枚の静止画を切り出し、5,674枚に対して骨格検出のキーポイント部位25カ所のアノテーションを行った。これにより、既存の学習データと合わせて計10,003枚の教師データを作成した。 本研究に先立ち開発した骨格検出システムに対し、上記学習データで追加学習を行った。その結果、キーポイントのアノテーション位置と推定位置とのズレは、追加学習前が平均38 pixelsであったのに対し、追加学習後は平均21 pixelsと大幅に改善された。 当該システムを用い、健康牛と跛行牛を撮影した動画を解析した結果、跛行牛に特徴的な頭頚部における上下動の増大や患肢における遊脚期の延長・立脚期の短縮などを定量可能であることが明らかとなり、運動器疾患の検知に利用可能であることが示唆されたことから、特許出願(特願2021-148059)を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
この数年間に、牛の行動(起立や横臥、静止、歩行など)を判別可能な画像解析技術が大幅に進んだ。当該技術は主として物体認識、すなわち「起立している牛」や「横臥している牛」を判別することで行動を定量化しようとするものである。当該技術は本研究で使用する骨格検出技術よりも計算コストが低いという利点がある一方、姿勢(歩様や立ち姿など)の解析には利用できないという問題がある。 本研究ではこれまでに、骨格検出システムを用いて歩様の定量化を行うことで、運動器疾患の検知が可能であることを示唆する結果が得られている。そのため、次年度以降は歩様の評価、すなわち跛行を検知可能な技術開発を主体として研究を進めることとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 予定よりも消耗品価格が安価であったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度に繰り越して使用する。
|