研究課題/領域番号 |
21K05865
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
田中 正浩 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業機械研究部門, 研究員 (30795133)
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研究分担者 |
梅野 覚 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業機械研究部門, 研究員 (50761920)
菊池 豊 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業機械研究部門, グループ長 (90391507)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 農作業 / 人間工学 / バイオメカニクス / アシストスーツ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、生体力学手法を用いることにより、農作業時にアシストスーツが持つ腰痛予防効果を定量的に明らかにし、農作業に適した腰痛予防アシスト方式を提案することである。 本年度の研究実施計画は、主に①農作業の生体力学モデルの構築、②アシストスーツの負担軽減効果の定量化である。 ①では、農作業で代表的と考えられた中腰、しゃがみ、腕上げ、コンテナの持ち上げの4つの姿勢・動作について、環境パラメータ等を任意に設定可能な農作業専用生体力学モデルを構築した。このモデルには、日本人の体格推定式(瀬尾、1999年)、日本人の関節可動域及び最大発揮力(NITE、2001~2002年)、椎間板圧縮力の推定式(Chaffin、1991年)などが組み込まれており、これにより、農作業における全身の関節トルクや椎間板圧縮力が算出された。 ②では、キャベツの収穫作業など5作業について、環境レイアウトを取得し、モーションキャプチャーにて姿勢・動作を取得した。さらに、動的アシスト力測定装置にて腰補助用のパワーアシストスーツ2機種の動的アシスト力を取得した。これらの結果を構築した生体力学モデルに入力することで、農作業においてアシストスーツの動的アシスト力が作業者に作用した際の負担軽減効果が明らかとなった。例えば、キャベツが詰まったコンテナ(10kg)の持ち上げ作業において、ある供試機の動的アシスト力による股関節トルクに対する軽減効果は最大で約69%であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究実施計画の目標であった、農作業の生体力学モデルの構築とアシストスーツの負担軽減効果の定量化は計画通りに達成されている。さらに、研究成果の普及活動として、研究過程で生まれた汎用モデルを農研機構の職務作成プログラムとして一般へ公開もしている。利用者の要望に合わせて4モデルの普及も順次行う予定である。 また、本年度の研究成果に関する学会発表を2件行っており、動的アシスト力に関する論文の執筆を終えた段階である。今後、開発した生体力学モデルによる農作業の身体負担の定量化やアシストスーツの負担軽減効果に関する論文も執筆する予定である。 なお、本研究の着想に繋がった調査結果は「アシストスーツの農業利用に関するアンケート調査」として論文となった。
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今後の研究の推進方策 |
開発した農作業専用生体力学モデルによって算出した関節トルクと動的アシスト力から、アシストスーツの負担軽減効果を定量的に見積もることができた。今後、アシストスーツの質量や慣性、アシストスーツの使用による姿勢変化の可能性等についても検討していく。さらに、定量化したアシストスーツの負担軽減効果を取扱い質量の軽減効果に変換できる可能性が示されており、令和4年度の研究実施計画にあるアシストスーツの腰痛予防効果の定量化について、質量を基準とした腰痛リスク評価法と関連付けられるか検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、モーションキャプチャーのソフトウェア保守について研究期間である3年間一括の保守を予定していたが、単年度ごとに保守を行うことになったため、その経費が次年度使用額となった。
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備考 |
ISO11228-1セミナー講演(日本規格協会主催、2022/02)、特別講義スマート農業 農業分野におけるアシストスーツの現状と課題(奈良県立なら食と農の魅力創造国際大学校、2021/09)、令和3年度第1回技術向上研修 負担軽減効果の測定(数値化)の方法(鳥取県、2021/05)
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