研究課題/領域番号 |
21K05869
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
我妻 忠雄 山形大学, 農学部, 客員教授 (70007079)
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研究分担者 |
且原 真木 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (00211847)
俵谷 圭太郎 山形大学, 農学部, 教授 (70179919)
田原 恒 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70445740)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 過酸化水素高分泌性植物 / 樹木フェノリックスー鉄錯体 / 根圏フェントン反応 / 農地・環境の修復 / 根圏有機環境の改変 |
研究実績の概要 |
キク科植物根のみが過酸化水素(H2O2)を大量に放出し、周辺鉄(Fe)との根圏Fenton反応でメタン、アトラジンを分解できることを見出した(Wagatsuma et al. 2021, 2022)。以上を踏まえ実験し、以下の結果を得た:(1)キュウリ、オオムギ、マリーゴールド(キク科)幼植物根を、H2DCF(細胞内活性酸素に蛍光)とBESH2O2(細胞内H2O2に蛍光)で、根アポプラスト中のH2O2をKI + starch溶液で、それぞれ染色した。その結果、オオムギはH2O2が不検出、キュウリ、マリーゴールドは細胞内に高濃度のH2O2を持つが、マリーゴールドのみが根外にH2O2を放出することが解った。(2)高塩環境で進化発生したキク科植物根から大量に放出されるH2O2は、根圏土壌catalaseでO2とH2Oに速やかに分解され、塩類土壌根圏に不足するO2の補給、塩類濃度の希釈、土壌緻密度の降下などによって塩ストレス回避に貢献すると推察した。(3)間伐材phenolicsからのFenton反応用の高性能鉄資材の創製のために、まずユーカリ葉を用いた。70 % 含水アセトン抽出液中の水溶液にFeCl3を反応させ、Phenolics-Fe錯体を得た。この凍結乾燥粉末の水溶性画分には、有機物Homologueとして一般に用いられているメチレンブルー(MB)をH2O2存在下で分解するFenton活性が、不溶性画分にはFenton活性とMB吸着能が認められ、これら能力には反復性があった。今後の方向性は、以下の通りである:①より高濃度のH2O2を放出するキク科植物を探索する。②H2O2供給土壌のcatalase活性の変化を明らかにすること。③今回創製したPhenolics-Fe錯体よりも、より強力な活性を持つ鉄資材の創製に取り組むこと。④土壌腐植、各種有機質肥料・資材などに対するFenton反応による小分子化の実態を明らかにすること。⑤以上により、Fenton活性による根圏有機環境の制御によって、有害有機環境を修復するとともに、高塩や低リンなどのストレスを回避させ得るかを解明すること。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キク科植物根から大量のH2O2が放出されていることが確認され、また、その現象が高塩環境ストレスの回避にとって有益であることが推察出来た。また、樹木からPhenolicsを抽出し、Phenolics-Fe錯体を創製し、これには、H2O2存在下で有機物を速やかに分解できるFenton活性と吸着・除去能とがあり、また、その能力に反復性があることが解った。したがって、初年度の進捗としては、当初目的の骨組みは得られたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より大量のH2O2を放出するキク科植物を探索すること、土壌条件にも適応しうる、より高性能なFe資材を創製すること、H2O2供給土壌のcatalase活性の変化を明らかにすること、各種有機質へのFenton能による分解産物を同定するとともに、根圏Fenton反応が根圏有機環境を改変することによって有害有機環境を修復するとともに、植物の各種ストレスの回避に貢献できることを証明することなどである。この過程で、有用なFenton資材を新規に創製し、特許申請を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種のH2O2関連実験に必要な実験資材、Phenolics-Fe資材や各種のFenton活性を有する新素材の創製に必要な実験資材、各種の植物栄養ストレスに関わる各種の実験資材は、初期的な実験に要するものに限定されており、今後の実験では、より本格的な実験資材が必要となるため。
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