研究課題/領域番号 |
21K05875
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
増永 二之 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (10325045)
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研究分担者 |
上野 誠 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (00403460)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 土壌 / 電池反応 / 汚水処理 / 微生物叢 / 窒素動態 / リン酸 |
研究実績の概要 |
2021年度の通水試験装置の構造を改善した3装置、(装置A)鉄板(負極)と炭板(正極)設置(電池反応あり:両板の上部を銅線で接続),(装置B) 鉄板と炭板設置(電池反応なし)、(装置C)土壌のみ により、人工汚水(リン酸 0.88、NH₄-N 1.44、NO₃-N 1.13、NO₂-N 0.02 mg/L,負荷1L/day)の処理試験を実施した。週に1度、装置内部と排水口の水を採取し分析した。試験終了後、鉄・炭板の位置および湛水深を考慮して土壌層の上中下部から土壌を採取し微生物叢を解析した。 (結果)試験開始当初の炭―鉄板の間の電流と電圧は約0.2mAと0.9Vで、経時的に低下し通水12週後は0.1mAと0.3V前後となった。電池反応による炭素板付近での酸素消費、鉄板付近での還元鉄の酸化にともなう酸素消費により、酸化還元電位は装置AはBよりも100~300mV程度電位が低下したが、湛水ほどの影響(<-200mV)は観察されず。電池反応で鉄板の溶解が(装置B比)79%増加し、装置内部(鉄板下部)および排水口のリン酸濃度はA装置で有意に減少した。窒素動態に関して、装置A内部(炭と鉄板付近)のNH₄-N濃度が汚水中の平均濃度よりも高く、電池反応によるNH₄が生成されていることが示唆された。電池反応による酸化還元電位の低下に伴う脱窒とアンモニアへの還元が同時に生じていることが考えられる。微生物叢の解析の結果、装置AとBを比較すると脱窒菌および亜硝酸をアンモニアに還元する酵素遺伝子(Nrf)を持つ微生物群の遺伝子検出数が装置Aの鉄板付近で減少する傾向にあった。装置Aでは、メタン生成菌と脱窒菌の競合が観察された。電池反応が微生物叢に影響を与えている事は確認されたが、遺伝子検出数の大小で窒素動態の変化は説明できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に計画から遅れていた実験項目を早期に終えて、その結果を踏まえて2022年度の研究を遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究により、予想とは異なったが、電池反応による微生物叢の変化が観察された。当初着目していた鉄、窒素の代謝だけでなく、硫黄や炭素の酸化還元反応に関わる微生物叢の変化を総合的に解析する必要があると判断された。2023年度は、電池反応を強化する実験装置により、土壌層内の酸化還元状態の変化に幅を持たせ、微生物叢および窒素動態の関係解析に焦点を当てて研究を進める。この結果を基に、電池反応による土壌の汚水浄化機能の強化および土壌中の窒素形態の制御の考察を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症対策のために学会発表を2023年度に遅らせ旅費を繰り越したため。2023年度の日本土壌肥料学会にて、複数名で発表を行う。
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