研究課題/領域番号 |
21K05882
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
永井 孝志 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (10391129)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 農薬 / 生態リスク / 複合影響 / 環境DNA |
研究実績の概要 |
本研究課題は以下3つのサブテーマに分けて実施している。 ① 複数農薬の複合影響を考慮した全国生態リスクマップの構築:令和4年度までに1990~2010年までの生態リスクマップを構築したが、新たに2015年ベースの生態リスクマップを構築した。このために、2015年当時の農薬要覧やクミアイ農薬総覧を用いて有効成分別・都道府県別・用途別の農薬使用量・農薬普及率を整理した。 ②生態リスクの経年変化や使用農薬を変えた場合の生態リスクの変化の可視化:農薬の生態リスクの1990~2015年の25年間にわたる長期変化を可視化することができた。2005~2010年にかけて殺虫剤で63%減、除草剤で35%減(全地点の平均)と生態リスクは大きく低減したが、それに比べて2010~2015年にかけては殺虫剤で15%減、除草剤で6%減(全地点の平均)と減少幅は低くなった。 ③評価されたリスクの大きさと実際の水生生物群集との比較検証:令和5年度は新たに茨城県内の13河川において5-6月にかけて採水を行い、昆虫と珪藻について環境DNAメタバーコーディングを用いた水生生物相を解析した。昆虫と珪藻それぞれについて農薬の影響を評価するための生物指標であるSPEARを計算したところ、サブテーマ①で評価した生態リスクの大きさによって指標値にも差が出てくることが示された。また、生物指標を計算する方法について、リード数をベースとする場合、リード数を変換した値をベースとする場合、ASV数をベースとする場合について結果を比較検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブテーマ①の全国生態リスクマップの構築に関しては、2015年までのデータに基づく解析が終了した。サブテーマ②については、1990年から2015年までの期間における生態リスクの推移が明らかになり、順調に進んだと判断された。サブテーマ③は、昨年度に引き続いて多地点の調査を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマ①:1990年から2015年までの期間における農薬濃度予測と生態リスク評価が完了したので、今後は2020年までの期間における農薬濃度予測と生態リスク評価を進め、リスクマップとして可視化する。当該年度における農薬の使用量は各年の農薬要覧、使用方法は当時の農薬便覧などの資料を活用してデータを整理する。 サブテーマ②:特定の農薬を対象に農薬代替のシナリオを作成し、異なる農薬に代替した場合の生態リスクを同様に解析し、生態リスクがどの程度変化するかをシミュレーションする。 サブテーマ③:昨年度までと同様に茨城県内の環境基準点の中から①の結果を用いて高リスク地点から低リスク地点まで調査地点をそれぞれ選定し、水稲用農薬の河川水中濃度が高くなる5-6月にかけて環境DNA法を用いた生物群集の調査をさらに多数の地点で進める。これまでの結果を合わせてサブテーマ①で評価されたリスクの大きさと実際の水生生物群集との比較検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通り使用した
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