研究課題/領域番号 |
21K05883
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
片柳 薫子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 主任研究員 (20455265)
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研究分担者 |
米村 正一郎 県立広島大学, 生物資源科学部, 教授 (20354128)
廣野 祐平 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (10391418)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 一酸化二窒素 / 土壌 / 茶園 / DNDC-Rice / モデル |
研究実績の概要 |
一酸化二窒素(N2O)は土壌から排出される微量温室効果ガスであり、畑地を主要排出源としている。N2O排出量を予測するモデルのひとつであるDNDC-Riceは酸素(O2)飽和度から土壌中の好気的な領域と嫌気的な領域の割合を仮想的に計算することによりN2O排出量予測精度を向上させているが、これらの領域の存在割合とN2O生成・消費速度との関係は十分に検証されていない。そのため、本研究ではO2濃度を極低濃度に制御しながら土壌を培養できる土壌ガス交換量測定システムを用いてN2Oの生成・消費速度を実測することにより、土壌中の水分量およびO2量とN2O生成・消費速度の関係を定量化し、既存の温室効果ガス排出量予測モデルであるDNDC-Riceの予測精度を改善することを目的として研究を実施している。 本年度は、既存の土壌ガス交換量測定システムを改良し、O2とN2Oの生成・消費量の定量精度を改善するとともに、各種土壌を能率的に測定できるようにした。また、N2OからN2への還元を阻害するアセチレンガスの添加を連続的に行えるように実験系を構築した。県立広島大学の土壌を用いて、水分を変え、酸素濃度を制御し、NO、 N2Oの放出量を測定し、その温度依存性を求めた。その結果、嫌気条件において、放出量の温度依存性はNOに対しN2Oの方が大きくなる傾向が得られた。併せて、令和5年度以降の土壌(茶園土壌をはじめに)に行う実験プロトコル(好気条件・嫌気条件での酸素・温度制御および土壌の水分条件、窒素添加の方法)を分担者間の議論により作成し、また、土壌を採取して培養前の可給態窒素量や有機態炭素量の測定を実施した。本実験と併せて、本研究で改良予定のDNDC-Riceについて、本研究課題の調査地のN2O排出量予測精度を検証するためにデータを収集し、計算を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は土壌ガス交換量測定システムを調整して、各種土壌を能率的に測定できるように整備を行った。また、N2OからN2への還元を阻害するアセチレンガスの添加を連続的に行えるように実験系を構築した。そして、県立広島大学の土壌を用いて、水分を変え、酸素濃度を制御し(好気条件、嫌気条件)、NO、 N2Oの放出量を測定し、その温度依存性を求めた。その結果、嫌気条件において、放出量の温度依存性はNOに対しN2Oの方が大きくなる傾向が得られた。これは、脱窒過程では、NO→N2Oと反応が進むが、土壌温度が上昇すると反応基質であるNOの生成量が多くなりその結果、反応生成物であるN2O生成量が多くなるためと考えられた。併せて、令和5年度以降の土壌(茶園土壌をはじめに)に行う実験プロトコル(好気条件・嫌気条件での酸素・温度制御および土壌の水分条件、窒素添加の方法)を分担者間の議論により作成し、また、土壌を採取して培養前の可給態窒素量や有機態炭素量の測定を実施した。 本年度は、また、本研究で改良予定のDNDC-Riceについて、本研究課題の調査地における過去のN2O観測値の再現性を確認するために、モデル計算に必要なデータを収集し、計算を開始した。本計算に用いるためのパソコンを一台購入予定であったが、半導体不足の影響で年度内納品が厳しいとの連絡を受けたため、発注を延期した。 以上の研究推進のために本研究に土壌を供試している対象圃場を視察し、土壌サンプルを採取して、オフラインでのディスカッションをおこなう予定であったが、COVID-19による移動制限のため、本年度の実施を見送った。
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今後の研究の推進方策 |
土壌ガス交換量測定システムについては培養条件(温度、土壌水分、O2濃度、N2O濃度)を変えながら、実験を実施し、対象土壌のガス交換特性を調べる。そして、物理化学的(反応速度論的)に土壌ガス交換をモデル化し、硝化・脱窒過程の各反応速度を調べ、温度・水分などの基本条件との関係を調べる。 DNDC-Riceの検証については、土壌物理性にかかる実測データが不足していることが本年度の研究で明らかになったため、調査圃場でサンプルを採取し、物理性を測定してモデル入力データとする。当該データの整備と併せてDNDC-Riceの入力データの収集と検証を実施する。 また、本年度の実施を見送った対象圃場の視察を実施し、併せて土壌サンプルの採取、オフラインでの打合せを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
モデル計算用にパソコンを購入予定であったが、発注が遅れた結果、年度内の納品が難しいとの回答を得たため発注を次年度に延期した。次年度予算執行が許可され次第、パソコンを一台購入する。
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