研究実績の概要 |
本研究ではO2濃度を極低濃度に制御しながら温度制御下で土壌を培養できるシステムを用いてN2Oの生成・消費速度を実測することにより、土壌中の水分量およびO2量とN2O生成・消費速度の関係を定量化し、DNDC-Riceの予測精度を改善することを目的として研究をおこなった。今年度は昨年度に引き続き,茶園土壌・森林土壌での亜酸化窒素(N2O)及びその生成に関与する一酸化窒素(NO)の放出量を測定した。昨年度は温度特性中心に報告したが,今年度はガス放出量と土壌水分条件の関係を中心に評価した。N2OおよびNOといった含窒素ガスの測定は通気式チャンバー法を原理とする土壌ガス交換量測定システムを用いた。今年は,試料は乾土あたり茶園土壌20gおよび森林土壌10gとし,最大容水量(WHC)の 60%を初期の土壌水分条件として調製した。25℃に保った調製試料を約0.8%(/WHC)/hourの速度で乾燥させつつ放出量の変化を評価した。キャリアガスは硝化が起こりえる環境を模す場合は精製空気,脱窒条件を模す場合は窒素ガスを用いた。硝化条件でのN2O放出量は水分条件に対して不規則な変化である時もあったが,おおむね水分量が大きいほど,大きくなる傾向にあった。NO放出量の最大値は茶園土壌では水分条件22.5%(/WHC)および森林土壌では40%といった低い水分量で得られた。脱窒条件のN2O及びNO放出量は土壌水分が増加するに伴い増加する傾向が見られた。積算放出量は硝化条件のN2Oを除いて茶園の方が森林よりも大きく,硝化条件では N2Oは0.6倍,NOは5.5倍,窒素ガス下ではN2Oは3倍,NOは2.5倍であった。今後は関係諸量(土壌中の無機態窒素含量)を分析するとともに,モデル化を行っていくが,本研究期間で代表的な土壌におけるモデル化のための本質的なデータが得られた。
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