研究実績の概要 |
世界の10人に1人が飢餓という食料危機の打破を目指した研究は、畜産学の最重要課題の一つである。本課題では、広く食利用可能な鶏卵に注目し、卵の成分を自在に調節可能なゲノム基盤の解明を目的としている。高い多様性を誇る日本鶏資源を活用し「高栄養の卵生産に関わるゲノム基盤」を解明することで、世界の多様なニワトリに応用し世界の食料危機の緩和を目指している。本研究では、ダルマチャボおよびトサジドリの交配に基づく分離世代の雌226個体から、卵重、卵殻色、卵白重などの卵形質ならびに、卵黄アミノ酸形質の表現型データを収集した。血液サンプルからDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いたRAD-seqにより24,000を超える一塩基多型(SNPs)情報を取得した。ゲノムワイド関連解析の結果、14の遺伝子座(QTLs)を発見することができた。卵重に関与する遺伝子座は第1、2、7、15、21染色体上に、卵サイズに関与する遺伝子座は第1、2、5染色体上に、卵白重に関与する遺伝子座は第1、2、21染色体上に、卵殻色に関与する遺伝子座は第20染色体上に検出された。これに加えて、卵黄アルギニン含量に関与する遺伝子座を第2染色体上に、卵黄フェニルアラニン含量に関与する遺伝子座を第9染色体上に検出した。今後も、分離世代の個体数を増加させた遺伝的マッピング研究を行うことで、卵のアミノ酸成分を調節可能な遺伝的基盤の理解を進め、ゲノム情報を活用した地鶏の遺伝的改良に応用したい。
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