研究実績の概要 |
我々はこれまでに筋委縮性側索硬化症(ALS)様病態を自然発症する新規突然変異マウスを発見し、その原因遺伝子がESCRT(endosomal sorting complexes required for transport)-IIIのサブユニットであるCharged multivesicular body protein 2A(Chmp2A)遺伝子のミスセンス変異であることを見出していた。ESCRT-IIIは多腔性エンドソーム(MVB)の形成や細胞分裂の膜の切り離しなどの膜のリモデリングに関わっており、Charged multivesicular body protein(Chmp)ファミリー(Chmp2, Chmp3, Chmp4およびChmp6)からなるタンパク質複合体である。神経細胞でのMVBの形成異常が神経変性疾患に関わっている可能性が明らかになってきているが、<i>Chmp</i>ファミリーノックアウト(KO)マウスの多くは胎齢9.5日以前に胎生致死となるが詳細は不明であった。本研究ではマウスの発生初期、特に卵割期におけるESCRT-IIIの機能を明らかにするために、<i>Chmp</i>ファミリーKOマウスを作製してその機能解析を行うことを目的とした。昨年度までに簡便なゲノム編集法であるi-GONAD法を用いてChmp2Aのエクソン2、Chmp3のエクソン4、Chmp4bのエクソン2に対してKOマウスの作製に成功し、すべてが胎生致死であった。 Chmp3 KOマウスについて、発生のどの段階で死んでいるかを調べた結果、胎齢7.5日までは発生が進んでいることが明らかとなった。 また、蛍光遺伝子を組み込んだゲノム編集マウスの作製を試みたが現在までは作製に至っていない。
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