最終年度は、昨年度に着手した、tert-ブチルジメチルシリル化による定量分析系の夾雑成分の除去に有用な固相抽出を自動で行うことができる「固相誘導体化法」において、tert-ブチルジメチルシリル化法を用いる場合に有用なメソッドの改良の詳細に取り組んだ。その結果、固相フィルターや他の前処理の工夫により、総ホモシステイン、総システイン、メチルマロン酸、TCA回路の有機酸群において、良好な分析の妥当性を得ることができた。一方で、分枝アミノ酸代謝物の3種類のケト酸については、従来法の方が優れた分析の妥当性を得ることができた。更には、酢酸、酪酸およびプロピオン酸においては良好な分析の精度を得ることができなかった。我々が有する方法の中では、GC-MS/MSを用いた別の方法が有用であることが確認できた。以上より、代謝物ごとに工夫する必要性が強く示唆された。 本研究機関全体を通じて実施した成果としては、黒毛和種の血漿において、①アンターゲットメタボロミクスとして多くの研究者が採用しているトリメチルシリル誘導体化では、有用な精度や感度が得られないことを確認し、②立ち上げたtert-ブチルジメチルシリル化による定量分析系で、トリメチルシリル誘導体化よりもアミノ酸およびケト酸の一部を良好な精度で分析できることを論文として公開し、③tert-ブチルジメチルシリル化による定量分析系の更なる改良により精度よく分析可能な物質を増やすことができた。これにより、枝肉成績に直接関連しうる、アミノ酸代謝、ビタミンの不足などをよりよく評価できる分析系を構築することができた。枝肉成績との関連については、注目していたトリプトファン代謝のキヌレニンにおいて、肥育初期にBMSと有意な関連が認められたことから更なる研究の必要性が示唆された。
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