ニワトリ14日胚筋芽細胞から調製した筋管細胞の培地へのデキサメサゾンの添加は、IGFBP-3~5のmRNA量を増加させるが、その生理的役割は肉用鶏においては重要ではない可能性が示された。一方、インスリンおよびIGF-1の培地への添加はIGFBPsのmRNA量に影響しなかったことから、これらのホルモンはIGFBPsの発現調節には関与しない可能性が高いと判断された。脂肪酸によるIGFBPsの発現調節効果は脂肪酸の種類によって異なること、およびその効果にPPARsは関与しないことが示唆された。PPARαおよびδのアゴニストはIGFBP-1の発現を下向き調節し、IGFBP-3の発現を上向き調節したが、これらの働きは生理的条件下における応答と逆であることから、重要な役割を果たしていないことが示唆された。IGFBP-2のmRNA量は調べた脂肪酸緒中でパルミチン酸によってのみ増加したことから、極めて特異的な作用機構によって制御されていること、その機構にはPPARsは関与しないこと、これらの機構の応答性は肉用鶏において減弱している可能性が示された。 これらの結果から、いくつかのホルモン、あるいは栄養素が関与するIGFBP-2~5遺伝子の転写調節機構における違いが、肉用鶏における骨格筋発達促進に関与する可能性が示された。以上、本研究により、ニワトリ骨格筋におけるIGFBPの遺伝子発現調節機構の一端と、その生理的役割の重要性の一部が明らかにされた。
|