目的】木材クラフトパルプ(KP)が乳牛の粗飼料代替えとして利用可能かどうかを検討する。 【材料と方法】今年度は、周産期乳牛を用いて動物試験を行った。ホルスタイン種経産牛18頭を用いた。分娩後に給与する粗飼料をチモシー乾草のみとする対照区と、チモシー乾草の一部をKPに置き換えるKP区の2区を設定し、各9頭を配置した。試験期間は、分娩前3週から分娩後12週までとした。分娩後の対照区飼料は、チモシー乾草、配合飼料、および大豆粕を粗濃比4:6で混合し、中性デタージェント繊維(NDF)含量が37%のTMRを調製した。分娩後の KP区飼料は、対照区のチモシー乾草の乾物比18%をKPに置き換え、粗タンパク質量で対照区と同じになるように設定した。 【結果】両区の乾物摂取量および体重は、試験期間を通じて、有意差は認められなかった。乾物とNDF消化率は、KPが有意に高まった。乳量および乳成分についても、KP給与による影響は認められなかった。両区の総VFA濃度に区間差は認められなかった。しかし、KP区で酢酸割合は有意に低下し、プロピオン酸割合が高まった(P<0.05)。このため、酢酸:プロピオン酸比は、KP区で減少した(P<0.05)。反芻胃液中LPS活性値は,KP区で分娩後高く推移した(P<0.05)。反芻胃内の日平均pHの推移は、分娩25日以降にKP区で対照区を有意に上回り推移した。反芻胃内の日平均温度は、分娩16日以降にKP区が対照区を有意に下回って推移した。亜急性ルーメンアシドーシス(SARA)発症日数は、対照区30.3日に対してKP区は12.1日と大きく減少した。
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