研究実績の概要 |
【目的】木材クラフトパルプ(KP)が乳牛の粗飼料代替えとして利用可能かどうかを検討する。 【材料と方法】試験は、ホルスタイン種泌乳牛26頭(体重:666±12.0kg, 泌乳日数:165±18.3日)を供試し、搾乳ロボット(VMS)が導入されたフリーストール牛舎で実施した。給与飼料は部分的混合飼料(PMR)およびVMS内の配合飼料とした。処理区として、慣行PMR(オーツ乾草:15% of DM)を給与する対照区と慣行PMRのオーツ乾草をKPで置き換えた(オーツ乾草: 5% of DM, KP: 10% of DM)PMRを給与するKP区の2区を設けた。試験期間は12週間とし、試験は開始2週間および終了前2週間に慣行PMRを、3週目から8週間にKP代替PMRを給与する期間反転法で実施した。 【結果】PMR中のCP含量は両処理区で同程度となり、NDF含量は対照区と比較してKP区で高値を示した。一方でデンプン含量は対照区と比較してKP区で低値となった。PMRのDMIは試験期間および処理区間での差は認められなかったが、VMS内配合飼料のDMIは試験期間を通して減少する傾向が認められ、対照区と比較してKP区で低値を示した。乳量は、処理区間での差は認められなかった。乳成分は、乳脂肪率、乳中尿素態窒素濃度は試験期間を通して減少し、対照区と比較してKP区で低値を示した。他方、乳タンパク率は試験期間を通して増加し、対照区と比較してKP区で高値を示した。血漿尿素態窒素とケトン体濃度は対照区と比較してKP区で低値を示した。 【結論】泌乳牛の混合飼料中NDFのKP代替給与は乳生産には直接影響しないが、タンパク質の利用効率を高める可能性が考えられた。これらの結果から、KPは粗飼料の代替え飼料として、乳牛のルーメン発酵と生産性の維持に対して有効であることが示された。
|