研究課題/領域番号 |
21K05903
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
松本 浩道 宇都宮大学, 農学部, 教授 (70241552)
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研究分担者 |
福井 えみ子 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20208341)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 繁殖 / 生殖 / 着床 / 受胎 / 妊娠 / 胚培養 / 体外受精 / 胚盤胞 |
研究実績の概要 |
体外受精胚の移植では受胎率および産子率が低い。これまでの多くの研究にもかかわらず改善されていない。このことは新規のアプローチが必要であることを示している。これまで着床と妊娠の成立に関する研究に取組み、マウス胚の着床能力獲得過程に関するタンパク質の発現や分解の制御機構について新知見を報告してきた。また、それらの分子機構を指標として、胚盤胞における遺伝子とタンパク質の発現を培養系で賦活化し、母体由来のシグナルに対する応答能力を高めた状態にして子宮へ胚移植するというアプローチで、マウス体外受精由来胚盤胞の着床能力を改善する手法を構築した。 着床率が改善されたということは、通常の培養系では着床しない胚における着床能力に正の効果があった結果である。一方、胚盤胞が着床能力を獲得する分子機構の解明には、着床能力において負に作用する因子も同定し、それらを組合せて解析することが有効である。 これまでの研究で、アミノ酸の組合せがマウス胚の着床率を正と負に制御することが示唆されていた。そこで、アルギニン(Arg)とロイシン(Leu)がマウス胚の着床能力関連因子の発現に及ぼす影響を解析した。 マウス胚用の培養液にArgまたはLeuを添加し、胚盤胞を培養後に胚移植を行ったところ、Argは着床率を低下させたのに対し、Leuは着床率に影響しなかった。一方で、ArgとLeuの複合処理は着床率を上昇させた。Argは一酸化窒素(NO)の材料となるのでNO産生量を解析した結果、Argにより増加した一方で、Arg+Leuでは変化がなかった。O2消費量はArgおよびArg+Leuにより低下した。NO産生量とO2消費量は、無処理では正の相関があったのに対し、ArgおよびArg+Leuでは相関がなかった。以上のことから、ArgおよびArg+Leuで生じるO2消費の低下は、NOとは別の経路で制御されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、胚盤胞の着床能力に関する研究をより進展させ、胚移植における着床率と産子率を改善させることを目的としている。そのために、培養液成分の検討による間接的な評価法に加え、生存性を維持して個々を評価・選抜した良好胚を移植する直接的な胚質評価法を構築する。胚着床の機序解明を進展させ、着床率を向上させることを本研究のゴールとしている。 初年度は、胚をライブで直接評価する手法の作出を行なった。光色素で細胞内のライブアッセイを行うことで、NO産生量とO2消費を同時に解析する手法を構築した。 その結果、ArgおよびArg+Leuで生じるO2消費の低下は、NOとは別の経路で制御されていることが示唆された。この成果は学会にて発表している。 以上のことから、現在までの進捗状況は概ね順調な進展であると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
・胚の着床能力獲得機構の解析 これまでにアミノ酸の組合せがマウス胚の着床率を正と負に制御することを報告している。すなわち、アルギニン(Arg)とロイシン(Leu)の複合処理は着床率を上昇させる。一方で、Arg単独は着床率を低下させるが、Leu単独では着床率に影響しない。そこでインテグリンやプロスタグランジン合成酵素などの着床能力関連因子にどのような作用機序があるかを明らかにする。Argは一酸化窒素(NO)の材料となるので、NO合成酵素(NOS)の関与が考えられる。そこでマウス胚におけるNOSの発現動態を解析する。NOS機能経路の上流には、フォスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)とタンパク質キナーゼB(Akt/PKB)がある。そこでそれらについても解析を行う。 ・胚をライブで直接評価する手法の作出 細胞内NOのライブアッセイを行う。またO2消費、ミトコンドリア膜電位、活性酸素種も同時に解析する手法を構築する。個々の胚で複数のガス代謝関連因子の作用を解析し、個別胚の着床能力評価条件を確定させていく。共焦点レーザー顕微鏡で定量および産生細胞の局在を解析する。また実用化のために、より簡便な目視判定を蛍光顕微鏡で評価する手法の構築も試みる。さらに、各測定因子の推定至適範囲にあるマウス胚盤胞を移植し着床能力を解析する。推定至適範囲より高い胚と低い胚も移植し、3群の着床率を比較して適正範囲を確定させる。胚移植後に得られた産子の正常性を確認する。極端に産子率が低いなどの異常があった際には、各試薬の濃度を低くするか、別の試薬を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク質の発現解析を含め、いくつかの実験項目が予定よりはかどらなかった。以上の理由から、次年度使用金額が生じた。 これについては、実験を円滑に進める為の物品費として使用する。また、研究成果を学会等で発表するための旅費としても使用する。
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