研究課題/領域番号 |
21K05904
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高木 優二 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (20226757)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 精子幹細胞 / 精原細胞 / セルトリ細胞 / ブタ / 器官培養 / 精子形成 |
研究実績の概要 |
本研究は単離したブタのセルトリ細胞と精子幹細胞を、人為的に3次元的な精細管環境を再現することにより、幹細胞ニッチを再構築し、体外で幹細胞を増殖させることを目的とする。2022年度は以下のことを明らかにした。 1.ブタ精巣からのセルトリ細胞の単離方法の再検討 昨年度から課題であった精巣からのセルトリ細胞の単離が予想以上に困難であった。幼若期から成熟期まで利用できる細胞表面マーカーが無く、しかも高純度でより多くのセルトリ細胞を必要とするためである。そこでOptiPrep密度勾配遠心法を用いて分画精度とスケールアップを中心に検討を行った。まず精巣より生存率の高い採取法と採取した細胞懸濁液からの死細胞除去の必要性を明らかにした。分画精度を上げるために、OptiPrepの密度勾配を非連続密度勾配から連続密度勾配に変更し、より短時間で容易に勾配層を作れる手法を確立した。密度勾配遠心後の細胞の回収には、ステッピングモーターを用いた細胞層の採取とCNCフライス盤を活用した24well培養皿フラクションコレクターの自作により実施できるようにした。これらの再検討により純度の高いより多くの細胞を取り扱えるようになった。 2微小ペリスタポンプを用いた灌流器官培養装置の改良 昨年度に作製した灌流器官培養装置をさらに小型化してより多くの灌流装置を一度に培養できる装置に改良した。また通気性EVAフィルムは滅菌方法に難点があったため、高圧滅菌操作に耐えうるフィルムを入手するとともに、培養装置に組み込んだ。精巣より精細管のみを採取し、同装置で精細管の器官培養条件について検討を行った。さらに3Dプリンターの活用により、作製した部品を鋳型に高圧滅菌可能な資材に変更することでコンタミの頻度を低減することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度で実施する予定であったセルトリ細胞の単離に躓いてしまい、セルトリ細胞の発現遺伝子プロファイルの網羅的解析を実現できていない。しかし時間を要したが、本年度に実施してきた精巣細胞のOptiPrep連続密度勾配遠心と自作フラクションコレクターの活用によりセルトリ細胞を用いた研究が今後一気に進展するものと期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)ブタセルトリ細胞のRNA-seq解析:セルトリ細胞の精子幹細胞へのパラクリン作用を明らかにするために、セルトリ細胞の発現遺伝子プロファイルをRNA-seq(外注)にて網羅的に解析する。 2)ブタ精細管の灌流器官培養と精子形成:作製した灌流器官培養装置システムを用いて、精巣より採取した精細管をより長期(60日間)培養するための器官培養システムを構築する。分化誘導因子や減数分裂誘導因子を加えることで、分化・減数分裂マーカーを指標に分化能について調べる。 3)セルトリ細胞による幹細胞のニッチ培養:セルトリ細胞からのニッチ因子の供給や相互作用、精細管の再構築能を検討するために、精原細胞とセルトリ細胞の混合割合を変化させてその影響を調べる。下垂体ホルモンと共に種々成長因子の効果を精子幹細胞の増殖、マーカー遺伝子発現、再構築された精細管構造の形態観察にて評価する。 4)再構築精細管の灌流器官培養:精原細胞とセルトリ細胞、さらに精巣由来細胞を混和して精細管の再構築条件を検討する。また構築精細管を上述2)の方法にて培養して比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ブタのセルトリ細胞の単離に時間を要し、セルトリ細胞の発現遺伝子プロファイルをRNA-seqにて網羅的に解析することが出来ていない。この解析は外注で行う予定で、ブタの場合、マウスなどとは異なり1サンプルの解析料が高額で、全てを解析するには多額を要する。そのための予算として助成金を残した。
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