研究課題/領域番号 |
21K05908
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
長谷川 靖洋 酪農学園大学, 農食環境学群, 助教 (50807328)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | wooden breast / 異常硬化胸肉 / ブロイラー / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
近年,ブロイラー産業で多発している胸肉の異常硬化(Wooden Breast,WB)は成長スピードの速い個体で多く生じる.このことから,WBは胸肉の急成長による組織内血管網(毛細血管も含む)の構築異常によって虚血状態になり,ミトコンドリアの機能異常が生じて,活性酸素種の産生と除去のバランスが崩れて酸化ストレス状態になると仮説立てて研究を展開している.2021年度は以下のことを明らかとした. 1.胸肉内微小血管の観察:WBはその重症度が進行すると筋線維が丸みを帯びた形態となることが明らかとなっている.そこで,本研究では,WBの特徴である筋線維の丸みを円形度として数値化して重症度の指標とし,正常,中等症,重症の3群に分類した.それぞれの試料に毛細血管に存在するCD31抗体を用いた免疫組織化学染色および動脈染色あるアルカリフォスファターゼ染色を行った.CD31抗体免疫染色およびアルカリフォスファターゼ染色は共に重症,中等症および正常の順で陽性部位が多く,それぞれ群間で有意差が認められた. 2.発現遺伝子の確認:同様に重症度分類を行い,低酸素誘導因子および血管内皮細胞増殖因子遺伝子の発現をリアルタイムPCRで確認した.低酸素誘導因子および血管内皮細胞増殖因子遺伝子の発現はともに重症,正常および中等症の順で高い傾向にあった. 2021年度の結果からWBの重症度が高いほど毛細血管および動脈が多く形成されていることが明らかとなった.しかしながら,WB発現仮説とは相反する結果となったことから,この要因を精査していく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究目標はWB胸肉内の毛細血管を含む血管型の構築異常の証明であった.当初の計画通り,順調に解析が進んでおり,本研究によってWBが重症になるにつれて血管組織が多く局在することが胸肉内血管組織観察によって示唆された.しかしながら,WBの発現仮説である胸肉内血管形成不良による胸肉内虚血を証明するには至らず,仮説とは相反する結果となった.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は当初の計画通り,CTアンギログラフィーによる胸肉内血管走行の可視化および血管走行と筋損傷領域の関連性について明確認する予定である.さらに,昨年度の研究成果の取りまとめを実施する.具体的には下記の通りである. 1.灌流法にて血管を洗浄したのち重合樹脂を投与して血管走行を可視化する. 2.1.が困難だった場合,翼下静脈に針を留置し,非ヨード型造影剤を注入し,血管走行を可視化する. 3.CTで可視化された血管付近から試料を採材し,組織観察および、遺伝子発現を確認する.
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次年度使用額が生じた理由 |
血管染色で使用する試薬は非常に高価であるが,研究室に常備してあった試薬を節約しながら使ったため,購入する頻度が少なくてすみ,乖離が生じた.
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