研究課題/領域番号 |
21K05914
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
石川 透 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (70249960)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナトリウム重炭酸イオン共輸送体 / 膜電流 / パッチクランプ法 |
研究実績の概要 |
細胞膜を介する物質輸送に関係する膜タンパク、いわゆる“膜輸送タンパク”であるナトリウム重炭酸イオン共輸送体は生体内の様々な組織・細胞に分布し、その生体内における役割は細胞内pH調節、上皮性重炭酸イオン分泌・吸収、体液の酸塩基バランスなど多岐にわたります。しかし、ナトリウム重炭酸イオン共輸送体が、「どのように細胞内の酸・塩基状態をセンシングし、重炭酸イオン輸送活性を調節しているのか」という重要な問題は未解決のまま残されています。本研究課題では、非常に高い重炭酸イオン分泌能を有するウシ耳下腺、特に耳下腺腺房細胞に機能発現するナトリウム重炭酸イオン共輸送体とその輸送活性を調節する可能性がある分子群に注目し、電気生理学や分子・細胞生物学的手法を総合的に用いて、新たな細胞内酸・塩基センシング機構の解明をめざしています。令和3年度はウシ耳下腺腺房細胞のナトリウム重炭酸イオン共輸送活性を間接的に調節しうるようなイオン輸送タンパクの探索の一環として機能的探索実験を開始しました。特に、ウシ耳下腺腺房細胞標本に電気生理学的手法(パッチクランプ法)を適用することにより、これまでの研究から注目しているイオン輸送タンパク活性を膜電流としてとらえ、単一細胞レベルで確認するための実験条件設定を行なってきています。さらなる実験が必要ではありますが、得られた重要な情報を活用しながら、本研究課題を総合的に推進していきたいと考えています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ウシ耳下腺腺房細胞において、ナトリウム重炭酸イオン共輸送活性をモニタリングし、且つ間接的に調節できるような細胞内酸塩基センサー分子としてのイオン輸送タンパクの機能的探索を行ってきています。しかし、注目しているイオン輸送タンパク活性の有無をホールセルモードで確認するための実験条件設定が完了していないことに加え、インサイドアウトモードにおける実験条件設定が遅れています。また、ナトリウム重炭酸イオン共輸送体細胞内機能調節タンパクの細胞内酸塩基センサーとしての分子特性に関する研究が遅れています。
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今後の研究の推進方策 |
今後、細胞内酸塩基センサー分子としてのイオン輸送タンパクを機能的に探索するにあたり、電気生理学的実験の条件設定をできるだけ早く完了し、注目している細胞内酸塩基環境により影響をうけるイオン輸送タンパクの存在の可能性について調べる予定です。さらに、機能的にその存在が示唆された場合、分子生物学的手法による分子特定にむけた実験を進めたいと考えています。また、ナトリウム重炭酸イオン共輸送体細胞内機能調節タンパクの細胞内酸塩基センサーとしての分子特性に関する研究に関しては、強制発現系を用いた機能実験を進めたいと考えています。
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次年度使用額が生じた理由 |
電気生理学的実験の進捗が遅くれたため使用予定であった物品の購入を行わなかったことに加え、その他の項目で計上していたDNAシークエンス解析外注を行わなかったため繰り越し金が生じました。これら繰り越し金は翌年度分として請求した助成金と合わせて、電気生理学実験用消耗品、細胞培養試薬および器具、一般試薬や分子生物学試薬、DNAシークエンス解析外注等に使用予定です。
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