研究課題/領域番号 |
21K05921
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
三澤 尚明 宮崎大学, 産業動物防疫リサーチセンター, 教授 (20229678)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カンピロバクター / 鶏肉 / 付着因子 / 食中毒 |
研究実績の概要 |
カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)は国内外の主要な細菌性食中毒の原因菌で、鶏肉とその関連食品が原因食品として重要視されている。農場でC. jejuniを保菌した鶏が食鳥処理場に搬入されると、食鳥と体全体が菌に汚染されるため、その付着メカニズムの解明と制御法の確立が喫緊の課題である。これまでの先行研究では、菌体と鶏皮膚との付着は物理的な原因によると考えられてきた。しかし、研究代表者らは、菌体側と鶏宿主側に特異的に結合する付着因子が存在するとの作業仮説を立て、両者から複数の蛋白質を検出・同定した(査読付き学術雑誌に掲載済み)。本研究課題では、C. jejuniと鶏と体皮膚の付着に関与する菌体側の非蛋白の付着因子の存在を明らかにし、これまでに同定した菌体蛋白も含めた皮膚との付着機序とその生物学的意義を解明することを目的としている。C. jejuniの外膜に発現する非蛋白の構造物は、莢膜、バイオフィルム、リポオリゴ糖(LOS)である。また、リン脂質はLOSと莢膜を橋渡ししていることが報告されている。平成3年度は、上記構造物のうち、莢膜、バイオフィルム、リン脂質の生合成酵素またはそれらの輸送蛋白をコードする遺伝子をC. jejuniのゲノム情報を基に大腸菌ベクターにクローニングし、カナマイシン耐性遺伝子を挿入した。さらに、これをC. jejuniの野生株に形質転換してノックアウトミュータントを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたCampylobacter jejuni 81-176株の菌体外に発現する莢膜、バイオフィルムおよびリン脂質の欠損株作出に成功した。さらに、C. jejuni 81-176株の野生株からリポオリゴサッカライド(LOS)を温フェノール法により抽出・精製した。変異株を作出したことにより、これらの鶏皮膚への付着試験を実施することが可能となり、菌体外に発現する非蛋白構造物の皮膚に対する付着能を評価できることから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
野生株と変異株のブロイラー皮膚に対する付着能を評価するため、ブロイラーの中抜きと体の背部から皮膚を採取し、直径3センチの円筒の底部に貼りつけて固定する。10の3乗~10の8乗 cfu/mlに調整したCampylobacter jejuniの野生株または変異株の菌液3mlを皮膚表面に添加し、30分静置する。その後滅菌PBSで洗浄し、鶏皮膚に付着した菌数を平板希釈法または最確数 (MPN)法より定量的に測定することで、ブロイラー皮膚に付着する菌体側の因子を調べる。 C. jejuniから抽出・精製したLOSの鶏皮膚に対する結合性は、オーバーレイアッセイにより実施する。即ち、鶏皮膚からアルカリ抽出画分を準備し、SDS-PAGEにより泳動後、ニトロセルロース膜に転写する。これに、精製したLOSを添加し、一定時間反応後に洗浄し、LOSの結合性を抗C. jejuni抗体(抗LOS抗体を含む)と酵素標識2次抗体を用いて検出する。さらに、これまでの研究で鶏皮膚から検出された付着因子のうち、試薬として入手可能な鶏血清アルブミンとの結合性をELISA法により確認する。皮膚アルカリ抽出画分とLOSの結合が認められれば、宿主側の付着因子をLC/MS/MSにより同定する。同様に、C. jejuniの莢膜に対する抗体を保有していることから、莢膜が皮膚に付着することが確認できれば、LOSと同様の手順で宿主側の付着因子を同定する。
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