研究課題/領域番号 |
21K05925
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
及川 伸 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (40295895)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 乳牛 / 2型ケトーシス / 予備牛 / リスク要因 / 予防 |
研究実績の概要 |
今年度(2022年度)は、以下の3つの試験を継続しデータの蓄積をさらに推し進めた。 ①乳牛における2型ケトーシス予備群の実態調査:道内の29農場を巡回し、分娩予定の2週間以内の牛368頭から血液を採取した。前年度との合計は58農場、血液サンプリング761頭となり、農場数はほぼ計画に近い数値となった。NEFA濃度の結果から2型ケトーシス予備牛の頭数割合は9.9%(75頭/761頭)であり、群レベルでの警戒群あるいは陽性群の割合は27.6%(16農場/58農場)と診断された。 ②予備牛の発生に関連する飼養管理上のリスク因子調査:アンケート調査は29農場で実施され、前年度と合計で54農場のデータが集積できた。データ解析はまだ途中であるが、群レベルにおいてNEFA濃度が10%以上(高NEFA群:7農場)の死亡割合は、それ未満(低NEFA群:17農場)と比較して高い傾向であった。高NEFA群では305日乳量が有意に高く、分娩時に畜舎の移動はされておらず、分娩後の搾乳牛群への移動も遅かった。 ③予備牛のリポタンパク質レベルでの病態分析と疾病発生対策:大学近郊の2農場を対象に、分娩予定14および7日前、分娩後3、7、14、21日の計6回の採血を行った。最初の採血時点でNEFA濃度が基準値以上の牛に5日間連続でプロピレングリコール(PG群: 500ml/日)または50%ショ糖(SR群: 1L/日)が与えられた。対照として無投与牛(C群)も設定した。前年度からの継続で最終的にPG群10頭、SR群9頭、C群10頭の合計29頭が供試された。分娩後7から21日における潜在性ケトーシスの延べ発生割合は、PG群およびSR群でC群と比較して低い傾向を示した。305日予想乳量はPG群でC群と比較して高い傾向にあった。以上より、乾乳期に予防的にPGまたはSRを投与することの有用性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は研究協力者の所属機関による事務的な対応の違いによって農場が予定どおりに確保できなかったこと、コロナ禍での出張制限があったこと等の問題が生じ、思うように試験が進まないことがあったが、2022年度はそれらについて研究協力者と密接に連携をとりながら進めることができ、血液サンプリングや農場調査については、概ね当初の計画に追いつく状態までとなった。ただし、血液サンプルや調査データの分析は次年度も継続実施の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本フィールド研究の柱となる3つの試験について、一定の成果を得ることができた。しかし、血液検査の分析やアンケート調査等のデータ分析が途中であることから、次年度以降も継続実施する。また、分娩前のプロピレングリコールやショ糖の投与効果について実験的に検証することを企画する。 ①「乳牛における2型ケトーシス予備群の実態調査」および「予備牛の発生に関連する飼養管理上のリスク因子調査」:不足データの集積のため、農場数、血液サンプル数を増やす。疾病予察の予測式を検討するためサンプリングした牛の分娩後の疾病調査を実施する。アンケートおよび飼養環境の調査データを分析する。 ②「予備牛のリポタンパク質レベルでの病態分析と疾病発生対策」:リポタンパク質分析をはじめ不足している検査項目について分析する。 ③実験的高NEFA牛に対するプロピレングリコール(PG)およびショ糖(SR)投与の検証」:実験的に脂質を投与することで高NEFA牛を作出し、PGとSRの投与効果について栄養生理学的及び内分泌学的な見地から分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査農場数はある程度確保し、血液のサンプリング数は増加したが、まだ分析が十分にできていない状況があり、その費用が支出されていない。 次年度においては、前年度に実施できなかったサンプル分析や不足した農場調査等に使用する計画である。
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