我々は先行研究において、in vivo発現誘導抗原同定法(In Vivo-Induced Antigen Technology; IVIAT)により、鶏生体内で強く発現するSGの抗原遺伝子の1つとしてratAを見出した。本研究ではこのratAに着目し、同遺伝子欠損変異株の鶏への接種試験において野生型と比較して著しく病原性が低下(生存率100%)したことから、鶏におけるSGの病原性へのratAの寄与を明らかにした。しかし、ratAをクローニングしたプラスミドでSGΔratA変異株を形質転換して得られたSGΔratA相補株の鶏における病原性を調べたところ、SGΔratA変異株と同じく野生型と比較して著しく低いことがわかった。そのため、SGΔratA変異株に認められた病原性低下の原因はratAの欠損そのものではなく、ratAの下流遺伝子の発現抑制である可能性が考えられた。ratAはCS54というクラスターに含まれ、その下流の遺伝子であるratBおよびshdAは、すでにS. Typhimuriumにおいて腸内定着に関連していることが明らかにされている。そこで、ratBおよびshdAをそれぞれ欠損させたSGΔratB変異株およびSGΔshdA変異株についても鶏における病原性を調べた。その結果、これら2株は感染系をSGΔratA変異株ほどの病原性の低下は認められなかった(生存率50%以下)。このことから、必ずしもratAだけが病原性に関わっているわけではないものの、ratAの病原性への関与は他の2遺伝子よりも強いものと考えられた。
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