研究課題/領域番号 |
21K05927
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
岡本 まり子 麻布大学, 獣医学部, 講師 (30415111)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イヌ肥満細胞腫 / KIT非依存性 / 肥満細胞腫マウスモデル / 膜型エストロゲン受容体 / GPER / ナイアシン / ニコチン酸 / ニコチンアミド |
研究実績の概要 |
膜型エストロゲン受容体GPERの、KITを標的としない新たなイヌ肥満細胞腫の治療薬としての可能性を探るために、イヌ肥満細胞腫マウスモデルを作製し研究中である。肥満細胞腫細胞株を移植後マウス皮下に形成された腫瘍にGPERアゴニストであるG-1を投与する際に、溶媒自体の毒性が課題点となっていた。G-1はPBS等には難溶性であるため、通常はエタノールやジメチルスルフォキシドに溶解させる。今回、PBSにエタノールおよびジメチルスルフォキシドを含めた溶液中にG-1を溶解させ、イヌ肥満細胞腫マウスモデルに投与したところプレリミナリーな結果であるが生存期間の延長が認められた。ナイアシンの投与実験については、ニコチン酸の溶解度が低く高濃度投与が不可のため、ニコチンアミド溶液を使用したところ、プレリミナリーな結果であるが生存期間の延長が認められた。ナイアシン(ニコチン酸・ニコチンアミド)がGPERを介して肥満細胞腫細胞に細胞死を誘導することを検討するために、GPER shRNAを安定的に発現させたマウス肥満細胞腫細胞株の樹立を進行中であった。GPER shRNA発現ウイルスベクターをマウス肥満細胞腫細胞株に作用させ、薬剤選択により細胞を選別した。しかし得られた細胞についてqPCRによりGPERの発現を調べたが、期待していた発現低下は検出されなかった。そこで現在、ゲノム編集法によるGPER遺伝子欠損マウス肥満細胞腫細胞株を作製し、解析を進めている。さらにKITを細胞表面に発現しないイヌ肥満細胞腫でGPERの発現を確かめた。このことは冒頭のKITを標的としない新たなイヌ肥満細胞腫の治療薬としてのGPERの可能性を前進させるものでありこれについても解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度は、研究室の統合による研究室のリアレンジメントをする必要があった。このリアレンジメントが初段階での計画よりも大掛かりのものとなった。機器や冷蔵庫、保管棚の移動や整理をはじめ、新しい実験スペースをセットアップするのに想定より長く時間を要した。新しい研究室において新規に実験申請、承認が必要なものもありこれにも時間を要した。これらの理由により当該研究の進行に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
イヌ肥満細胞腫のマウスモデルを用いて引き続きG-1およびナイアシン(ニコチンアミド)投与の検討を行っていく。 ナイアシン(ニコチン酸)が肥満細胞腫細胞に細胞死を誘導することをin vitroでさらに検討していく。肥満細胞腫細胞におけるGPERとGPR109Aの発現解析、細胞死誘導機序がG-1のそれと同様かどうかについて、細胞内リン酸化酵素の活性化などの分子機構解析を行い調べる。 GPER遺伝子欠損マウス肥満細胞腫細胞株を樹立したのでこの細胞株を使用して同様の解析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はラボの改装があり、新しい研究室の実験スペースのセットアップに時間がかかってしまった。その分実験のスタートが遅れてしまい当初購入予定だった試薬と実際に購入した試薬とのずれが生じてしまったため。
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