流行を拡大しているdolphin morbillivirus (DMV)の特徴をSLAM利用能力から明らかにするために、昨年に引き続き、他の鯨類モルビリウイルスとSLAM利用能力について比較を行い、DMVのHemagglutinin (H)タンパク質のアミノ酸置換がSLAM利用能力の変化を生じていること、また、DMVのFusion (F)タンパク質はSLAM非依存性の細胞融合を生じることを明らかにした。また新たにDMV Hを持つ組換え麻疹ウイルス(IC/DMVH-EGFP)を作成し、ウイルスとしてもDMV HのSLAM利用能力が付与されるかについて解析を行った。Vero細胞に様々なSLAMを発現した細胞株にIC/DMVH-EGFP、IC-EGFPを感染させ、ウイルスの侵入および増殖について比較したところDMVHの発現プラスミドによる結果と一致することが明らかとなった。DMV Hタンパク質のSLAM利用能力の変化は、ウイルスとしてもSLAM利用能力を変化させるため病原性への関与が推測された。また、本年度においても国内海岸線に漂着した鯨類サンプルに対し鯨類モルビリウイルス感染の有無のスクリーニングを実施した。Vero細胞にHAタグ融合イルカSLAMを発現させた細胞(Vero/dolphin SLAM)を用いて、ウイルス分離を試みた。今年度解析した検体でもウイルスは分離できず、海外流行株のような陽性検体は確認されなかった。日本近海における鯨類モルビリウイルス感染の広がりについて新たな知見が得られるように解析を進めている。
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