研究課題/領域番号 |
21K05932
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
古市 達哉 岩手大学, 農学部, 教授 (30392103)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 糖ヌクレオチド / 運動器疾患 / SLC35D1 / CANT1 / 遺伝子欠損マウス |
研究実績の概要 |
糖ヌクレオチド(NTS)は、糖鎖合成の際に単糖の供給源となる分子(糖供与体)である。申請者は2つのNTS代謝関連遺伝子 (SLC35D1とCANT1) の欠損マウスの作製に成功しており、これらの遺伝子が骨格の発生に重要であることを報告してきた。更に成長期以降の正常マウスを解析し、SLC35D1は骨で、CANT1は腱・靭帯で発現が高いことを確認している。本研究の目的は、1) 骨の恒常性維持におけるSLC35D1の役割、2) 腱・靭帯の恒常性維持におけるCANT1の役割を明らかにすることである。今年度に得られた結果は、下記の通りである。1)ゲノム編集システムを用いて細胞特異的遺伝子欠損マウス作製のために必要となるSLC35D1-floxマウスの作製を開始したが、まだ目的のマウスは得られていない。一方、SLC35D1と同じファミリーに属するSLC35A3の欠損マウスの作製に成功し、同マウスは脊椎および軟骨形成不全を呈し、SLC35A3は軟骨におけるグリコサミノグリカン合成を調節していることを明らかにした。2) 昨年度、CANT1欠損マウスの腱幅は野生型マウスと比べ有意に減少しており、電子顕微鏡解析からコラーゲン細繊維が大きく変形していることを報告した。今年度はウエスタンブロット解析等からCANT1欠損マウスの腱組織で産生されるデコリンの分子量が、コントロールマウスと比べて減少していることを示した。デコリンはコラーゲン細繊維の規則正しい配向に必要なプロテオグリカンである。CANTはデコリンの産生調節を介して、腱コラーゲン細繊維の恒常性と腱組織の剛性 (stiffness )の維持に関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SLC35D1-floxマウスの作製は未だ成功していないが、SLC35D1と同じファミリーに属するSLC35A3の欠損マウスの作製に成功し、論文発表することができた。一方、CANT1はプロテオグリカンの一種であるデコリンの産生を調節しており、デコリン産生を介して、腱コラーゲン細繊維の恒常性と腱組織の剛性 (stiffness )の維持に関与している可能性を示すことができたた。
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今後の研究の推進方策 |
CANT1欠損マウスについては、腱組織の詳細な糖鎖解析を行う。CANT1遺伝子変異が原因で発症するDesbuquois骨異形成症の臨床所見の一つとして、関節弛緩を伴う関節脱臼が挙げられる。CANT1欠損マウスの腱組織の解析からCANT1の機能不全による関節異常の原因を明らかにし、論文として発表したい。骨芽細胞特異的SLC35D1マウスについては、SLC35D1-floxマウスをライン化し、骨芽細胞でCreを発現する Col1a1-Creマウスとの交配を開始する予定である。
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