研究課題/領域番号 |
21K05933
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
木崎 景一郎 岩手大学, 農学部, 教授 (40337994)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 環状RNA |
研究実績の概要 |
今年度はcircRNA-seq 解析の結果、bta-circ_9746に次ぎ高発現を示したbta-circ_8048、1913及び6638についての同定作業を進めるとともに、胎盤以外の他の組織での発現分布やcircRNA/host gene mRNA比について検討した。divergent primerを用いてRT-PCRを行ったところ、bta-circ_8048、1913及び6638のすべてにおいて、予想された分子量の増幅産物が検出されたが、高分子量の増幅産物も認められた。これら2種類の増幅産物について、サブクローニング後にDNAシークエンスにより塩基配列を調べたところ、予想された分子量の増幅産物はback splicing junctionを1つ有するhost gene mRNA由来の配列であることがわかった。一方、高分子量の増幅産物は2つのback splicing junctionを有していたことから、高分子量増幅産物はRolling cycle amplificationによる産物であることがわかった。また、環状RNAには作用せずに直鎖状RNAのみを分解するRNase Rを胎盤RNAに処理後にcDNAを合成した。RNase R処理及び未処理RNA由来のcDNAを用いたRT-qPCRによる定量の結果、RNase R処理では各host gene mRNAは検出されないが、bta-circ_8048、1913及び6638は検出された。一方、RNase R未処理では各host gene mRNA及びbta-circ_8048、1913及び6638はともに検出されたことから、これら3つのcircRNAは環状構造のRNA由来であることが明らかになった。bta-circ_9746,8048、1913及び6638の全身臓器における発現を調べたところ、肺、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、精巣、子宮内膜、胎盤、皮膚及び筋肉のすべての組織に発現していた。各host gene mRNAも同様に発現していた。すなわち、特徴的な組織分布は認められず、諸臓器に普遍的に各circRNA及びhost gene mRNAが発現していることが明らかになった。各circRNAの発現量は組織によって違いがあるもののcircRNA/host gene mRNA比は20-50%程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウシ胎盤に発現するcircRNA として、新たにbta-circ_8048、1913及び6638を同定した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、各circRNA中のマイクロRNA結合部位についても調べ、その機能の推定も試みる。また、これまでに同定したcircRNAは、全身諸臓器に普遍的に発現するcircRNAであることから、circRNA-seq解析の結果を詳細に調べ、胎盤特異的に発現するcircRNAの探索を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は3つのcircRNAの同定作業に若干の時間を要し、胎盤特異的circRNAの同定が次年度に持ち越しとなったため、次年度使用が生じた。令和6年度に実施予定である。
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