中枢神経組織は一度損傷すると再生することは無いと考えられてきた。しかし、近年の研究により、脳組織においても微弱な再生性変化が生じることが示唆されている。これまでに、我々はTrimethyltin (TMT)を投与した脳組織再生モデルマウスにおいて、再生が生じる病変内にTリンパ球が遊走することを捉えた。加えて、Tリンパ球を欠損するヌードマウスを用いたTMT投与モデルでは、脳組織の再生が促進された。これらはTリンパ球が脳組織の再生を阻害することを示唆している。 本年度は、ヌードマウスTMT投与モデルに、正常マウスよりCD8陽性Tリンパ球を移植し、脳組織再生に生じる変化を免疫組織学的に評価した。その結果、CD8陽性細胞の移植により脳組織再生の阻害が確認された。加えて、病変部におけるアストロサイトおよびミクログリアの増数がみられた。以上のことから、CD8陽性リンパ球が脳組織再生の阻害に重要な働きをもち、グリア細胞の活性化がそれに関連することが示唆された。
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