研究課題
経口摂取された微小プラスチックが消化管粘膜にどのような毒性を与えるのかを明らかにする必要がある。培養腸管上皮細胞に取り込まれた微小プラスチック粒子がリソソームに集積する事例に着目し、プラスチック粒子のリソソームの機能に対する影響について検討を行い、微小プラスチック毒性の新たな作用点・作用機序の解明を目的とした。腸管上皮モデル細胞株であるCaco-2細胞を用いて、直径0.1 μmのポリスチレンビーズを細胞に取り込ませた結果、後期エンドソームおよびリソソームの膨化・領域増加が観察された。また特にリソソームへのポリスチレンビーズの滞留が顕著であることが分かった。ポリスチレン粒子がリソソーム機能へ与える影響を評価するため、リソソームの障害の一つであるリソソーム膜の不完全性(膜透過性の亢進)を検出しようと試みた結果、リソソーム膜透過性亢進の最も鋭敏な検出法である蛍光タグ付加Galectin3 punctaアッセイにて、リソソーム膜への障害が生じていることを示唆する結果が得られた。一方で細胞質内へのリソソーム腔内局在酵素の漏出はわずかであり、リソソームの破綻は生じていないと考えられた。後期エンドソーム内で生成され、その大部分はリソソームで分解されるエクソソームの細胞外への分泌は、リソソーム・後期エンドソームの膨化・領域増加に伴って増加していた。しかし分泌されたエクソソーム内構成物の質的変化の解析までは至らなかった。またオートファジーの実行に、オートファゴソーム分解の場であるリソソームへのポリスチレンビーズ滞留が与える影響について評価するため、蛍光体タグ付加LC-3B発現プラスミドの細胞への導入を令和4年度・5年度と試みたが、実用に足る遺伝子導入効率の条件を研究期間内に見出すことは出来ず、ポリスチレンビーズのオートファジーへの影響の評価は限定的な物に留まった。
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Archives of Biochemistry and Biophysics
巻: 752 ページ: 109872~109872
10.1016/j.abb.2023.109872