研究課題/領域番号 |
21K05941
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
翁長 武紀 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (90224261)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胃オルガノイド / 小腸オルガノイド / 内分泌細胞 / 消化管ペプチド |
研究実績の概要 |
オルガノイドの開発において、Xenin内分泌細胞は生体内では胃および十二指腸粘膜に高密度に局在することから、先ずラットの胃粘膜をカルシウムキレート法で処理して陰窩を含む上皮細胞を分離してマトリゲル内で3次元培養した。これにWnt,、Noggin、R-spomdin、上皮成長因子EGFや線維芽細胞成長因子FGF、ガストリンなどの各種分化促進因子を適用し、初期培養液中に必要なニコチンアミドやRHOK-inhibitorであるY-27632をある時期以降から減らすとオルガノイド形成が進み、内分泌細胞への分化も増えると報告されているが、実際行ったところその通りの結果が得られていない。1回目は約4週間、2回目は約6週間培養しているが、細胞は継代できても、陰窩の幹細胞が分化して、球形のオルガノイドを形成するに至っていない。動物種は異なるが、既報に従った組成の培養液を調製しているが、ラットの胃上皮培養細胞の分化が進まず、初年度の目標であった転写因子を遺伝子導入して内分泌細胞に富むオルガノイドを作製するところまで進んでいない。 培養細胞の分化の進行を確認するための複数のPCR系は別途準備できているが、培養細胞の形態的な分化が不十分であるので、分化を検証するに至っていない。 調節遺伝子のクローニングについては、オルガノイドにノックインするラットの転写因子のうち、十二指腸への分化に関わるラットPdx1はクローニングできたが、胃の分化に関わるラットのBapx1のクローニングが一部未完成である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
オルガノイドの培養実験が盛んになったため、組織培養に不可欠な試薬(マトリゲル)を発注したが国内で一時欠品になり、製造元での生産と出荷が回復して購入できるまでに2ヶ月以上(9月~11月)を要した。また、組織培養に使用していたCO2インキュベーターの故障のため、その修理期間中約1ヶ月間(1月~2月)培養を中断せざるを得なかった。 また、培養液に含まる各種成長因子等の組成は既報に準じているが、必ずしも既報のとおりの製造元から入手していないことや、製品のlotによっても細胞の分化や発育に差が生じると報告されていることから、その点も検討する必要性を感じている。
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今後の研究の推進方策 |
既報のマウスやヒトの胃での培養条件を基本にしながら培養していたが、その条件ではうまくいかなかったので添加する諸因子の濃度など培養条件を多岐にわたって変化させることで、ラットの胃組織に適合した培養法の検討を急ぎたい。特に、分化に必要とされるEGF, Wnt, R-sponsinとBMPシグナル抑制のバランスやRHOK-inhibitorのY-27632を除去するタイミングの調整が必要であり、必要であればWntシグナルの増強にCHIR99021の一時的な添加等も検討する。さらにマウスの胃オルガノイド作製であまり影響がなかったというp38 MAPkinase抑制剤やプロスタグランジンE2などの使用も再考する。また、これまでラット胃粘膜上皮のオルガノイドの開発から始めていたが、今後はラット十二指腸のオルガノイドの作製も並行して進める。 実際、前述のように培養試薬は既報に準じているが、必ずしも既報のとおりの製造元から入手していないことや、製品のlotによっても細胞の分化や発育に差が生じると報告されていることから、うまくま分化を誘導できなければその点も検討する。さらに、本研究では摘出した胃腸組織からの初代培養が基本だが、iPS細胞から胃オルガノイドを分化させる既報の培養条件なども参考にしながら条件検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
準備段階で一部の試薬が国内で一時欠品となってその購入に時間がかかり、またCO2インキュベーターの故障によってやむを得ず実験を中断した結果、実験の実施時期が十分取れなかったのでその期間分の消耗品費が支出できなかった。遅れた分の実験を年度を超えて実施することになるため、次年度使用額が発生した。 今後は、胃のみでなく十二指腸のオルガノイド作製も並行して実施して後れを取り戻すことを優先し、本年度に進める予定であった器官形成に関わる遺伝子導入による内分泌細胞をより多く発現したオルガノイドの作製まで早期に完了させ、予定どおりオルガノイドを用いた内分泌細胞の刺激分泌連関を測定する実験系の確立まで進める。
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