研究課題/領域番号 |
21K05942
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
渡邉 敬文 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (50598216)
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研究分担者 |
北村 浩 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (80312403)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ブロイラー / 異常胸肉 / マイトファジー / 間葉系前駆細胞 |
研究実績の概要 |
ブロイラーの胸肉が異常な筋変性と線維化により硬化する「異常胸肉」の発生機序について生理的マイトファジーに着目して生化学的および形態学的解析を行った。生化学的解析は、2021年度は骨格筋のマイトファジーを促進する因子として着目されているユビキチン特異的プロテアーゼ(USP: Ubiquitin Specific Protease)ファミリーの一つであるUSP-2の遺伝子と筋変性および線維化に関与する遺伝子群の発現量について網羅的解析を行った。学内の養鶏施設から選抜した異常胸肉を発症した鶏と未発症の比較では、発症鶏ではUSP-2の発現量が増加傾向であることが示された。一方で、筋線維芽細胞の再生に関与すると報告されているWISP1 (Wnt1 induced Secreted Protein 1)が発症鶏で有意に増加していることが示された。形態学的解析は、骨格筋の線維化を誘導する間葉系前駆細胞であるFAPs(Fibro/Adipogenic Progenitors)とミトコンドリアの構造変化に着目して観察を行った。FAPsは発症鶏の筋芽細胞の周囲に特異的に観察され、幼弱なコラーゲン細線維の産生により筋芽細胞が筋線維へ再生するのを妨げているような像が観察された。ミトコンドリアの観察は透過型電子顕微鏡により行った結果、2次元的観察ではマイトファジーの状態を充分に解析出来ないと判断し、3次元電子顕微鏡による解析に手技を変更した。具体的には3次元構造の基本的な情報を得るために未発症鶏の胸肉のミトコンドリアの解析を行った。その結果、ブロイラーの胸肉は一般的な骨格筋と異なり小型のミトコンドリアが筋原線維の長軸に沿って散在していることが明らかとなった。 これらのことから、2022年度はUSP2にWISP1およびFAPsを加えた遺伝子発現量の差異について各症例の個体数を増やして解析を行うとともに、発症鶏のミトコンドリアの3次元的構造変化について解析を進める方針が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
材料採取は計画通り行うことが出来たが、コロナ過の影響により研究時間の確保が計画通りに進まなかった。また、予測されていたUSP-2以外の新たな候補遺伝子の存在が示されたことによる追加の研究を行う必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記載した通り、候補遺伝子の選定と解析項目の方針は示されたので、今後は個体数を増やして生理的マイトファジーの要因について確実な情報を得ることにする。また、飼料の調整による上記の関連因子の発現制御の可能性についても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な消耗品の納品が年度内に間に合わなかったためであり、2022年度には早々に執行するため。
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