研究実績の概要 |
これまで本研究室で行っている犬凍結精液では、融解時に融解液は使用していなかったが、この凍結精液を使用した人工授精によって産子を得ることが可能であることが明らかとなっている。しかし、融解時に様々な精子活性物質を含む融解液を使用することで融解後の精液性状を向上させることができ、さらに受胎率を向上させることができると考えられる。そこで、本研究室独自の融解液を開発することを計画し、実験を行った。 実験としては、これまでの犬精子の運動性を活性化させる物質に関する研究から、エチレングリコールビス-N,,N,,N,,N,-四酢酸(EGTA)とN-アセチル-L-システイン(NAC)を選択し、これらの物質を添加した融解液を作成し、凍結融解した犬精液に添加した後の精液性状の変化について観察した。なお融解液の基礎液としては、当研究室で使用している犬精液希釈液である卵黄トリス・フルクトース・クエン酸から卵黄成分を抜いた希釈液(T-FC)を用いた。実験1としてT-FC中に0、5、10、15、25 mmolのEGTA、実験2としてT-FC中に0、1、2.5、5、10 mmolのNACを添加した融解液を作成して、融解後の犬凍結精液に添加し精液性状に及ぼす影響を検討した。 その結果、どちらの物質も5 mmolの濃度で添加した融解液を使用した時に、融解後の精液性状をコントロール群よりも良好に長期間維持できることが明らかになった。さらにこれらの結果から、5 mmolのEGTAおよび5 mmolのNACを添加した融解液を作成し、融解後の犬凍結精液に添加して精液性状に及ぼす影響を検討したところ、融解液を使用しないコントロール群に比較して、良好な精液性状を長時間維持できることが明らかになった。
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