研究課題/領域番号 |
21K05950
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
乙黒 兼一 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (40344494)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アストロサイト / プリン / うつ病 |
研究実績の概要 |
本年度は、炎症性ストレスモデルとしてマウスにLPS(リポポリサッカライド)を投与した。マウスの活動量や飲水量に影響を与えない条件下で、強制水泳試験における不動時間の増加や、新規物体探索試験における探索時間の減少が示されたことから、うつ様行動の発現と短期記憶の障害が示唆された。エバンスブルー投与により血液脳関門の透過性を評価したが、透過性の増加は認められず、本実験条件では血液脳関門の破綻などは起きていないと考えられた。 LPS投与後、アストロサイトとミクログリアの活性化の指標となるGFPA及びIba-1の発現増加が海馬において認められた。アストロサイトは突起数の増加などSholl分析で形態が複雑化していることが示されたが、反応性アストロサイトの指標となるマーカー分子に変化は見られなかった。また、ニューロンマーカーNeuNでの染色では海馬ニューロンの密度に変化はなかった。ゴルジ染色により海馬ニューロンのスパインを評価したところ、スパインの密度に変化は見られなかったが、未熟/成熟スパインの割合が増加していたことから、海馬でのシナプス伝達が変化していることが示唆された。 脳の機能的変化とプリン動態との関連性を検討するために、脳内におけるプリン代謝関連分子のmRNA発現を調べた。複数のプリン代謝酵素の発現がLPS投与モデルにおいて増加、あるいは減少していることが確認され、脳内プリン動態の変化が脳機能に影響を与えている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、LPS投与により炎症ストレスモデルを構築することができた。本モデルで、情動行動の変化や海馬スパインの変化などが観察されている。また、本研究課題の主要な目的であったプリン動態の変化も見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
炎症ストレスモデルに抗炎症薬を投与し、これまでに観察されている個体、組織、細胞レベルの変化に対する作用を明らかにする。また、他のモデル(コルチコステロン投与モデル)などを導入し、これまでの結果が条件やモデルによって異なるのかを検討し、そのメカニズムを明らかにする。 プリン動態の変化が起こっている細胞種を特定するために、免疫組織染色とセルソーティングを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定であった学会がオンライン開催になったため、その分の旅費を次年度の学会参加に充当する。また、セルソーターや免疫染色による検討を次年度とし、そのための抗体や試薬の購入も次年度に移行した。
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